昨年12月に製薬企業のサノフィが実施した調査では、花粉症患者の66%が治療に何らかの不満を持っているようだ。
興味深いのは「治らないので、半分諦めて治療している」人が、治療満足群34%に対し、不満群では64%に達したこと。満足群の患者たちは、自ら医師に症状を訴え、薬の変更を相談するなど、積極的に症状をコントロールしようとする姿勢が目立った。治療に参加しなければ満足は得られないらしい。
さて、諦め派も積極治療派も、今年1月にネットや一般紙でいっせいに流れた「“なめる”花粉症薬承認!」というキャッチーな記事に飛びついたかもしれない。何しろ「なめるだけ」「根治」という夢のような言葉が並んだから。
しかし、話題の「シダトレン花粉舌下液(製造販売元:鳥居薬品)」は、トローチ錠のように「なめる薬」ではない。正しくは、舌下=舌の裏側に決められた量の薬液を1日1回滴下して、2分間そのまま放置した後、飲み込む薬。その後5分間は、うがいや飲食を控える、という服用方法だ。
治療の原理は、アレルギー疾患の原因となる「アレルゲン」を低濃度・少量から投与し、徐々に増量しながら、アレルゲンに対する過敏性を減少させる「減感作療法」。平たく言えば、極めて慎重にアレルゲンに体を慣らすワケ。少なくとも2年の治療期間が必要だが、治療後は約7割で症状が軽減、消失するなど高い効果が期待できる。もともと皮下注射を使って行われてきたが、通院の手間がネックで普及しなかった。「舌下法」ならハードルが下がるだろう。
注意してほしいのは、超微量とはいえアレルゲンを体内に入れる治療法であること。ショック反応を起こすリスクもある。まして、花粉症シーズン真っただ中でヒートアップしている体に、さらにアレルゲンを入れるのはNGだ。「舌下減感作療法」は来シーズンの治療の選択肢だ。夏を過ぎたころに医師に相談してみるといい。
さて、厚生労働省の指導もあり、現時点で「シダトレン」を処方できるのは、鳥居薬品の講習会を受けた登録医のみ。直接的な治療法だからこそ、ナメてはいけない。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)