ノートパソコン、iPhone、ボーイング787…
世界的な価値の連鎖が進むビジネスのいま

 下図は、『領域を超える経営学』の第12章「価値連鎖の戦略とは」で示したものです。少しおおげさではありますが、実際のインタビューから、こうした事例があると聞いたCPUとノートパソコン生産の世界的な価値の連鎖の例です。

出典:琴坂将広『領域を超える経営学』(ダイヤモンド社、2014年)
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 これは、(1)原材料がロシアで生産され、(2)それが韓国で精錬され、(3)日本に送られてウェハーになり、(4)アメリカで回路が焼きこまれ、(5)マレーシアでパッケージとしてCPUになり、(6)中国でパソコンに組み立てられ、(7)それがイギリスで販売される、という世界的な価値の連鎖を示しています。

 もちろん、ソフトウェアがアメリカとインドで作られ、商品のデザインが日本で設計され、顧客サポートが東欧諸国から行われるような現実もあるでしょう。無数の国々と企業が、国境を越えて1つの製品を販売します。

 たとえば、アメリカ企業製のあるノートパソコンには、合計で約400社が部品部材を提供していたと聞いたことがあります。もちろん、その400社は世界中の企業です。それらの企業が国境を越えて協業することで、現代の製品はでき上がります。

 みなさんにも馴染みのあるケースであれば、iPhoneも典型的な例といえます。IHSの調査(*4)などを参照すれば、その部材は日本、韓国、ドイツ、イギリス、アメリカの様々な企業が関わっていることがわかります。

 また、ボーイング社のボーイング787も有名な事例です(*5)。バッテリー問題が取り沙汰されてはいましたが、国際的な協業という観点からは、あれほどの巨大な商品をアメリカ、日本、イタリア、中国、カナダ、オーストラリア、韓国、イギリス、フランス、スウェーデンなどの企業が協業して生産する時代となったのは、驚くべき現実とも言えるでしょう。

 これらは一例に過ぎません。ありとあらゆるハイテク製品が、そしてときには農作物に至るまで、世界中を旅して私たちの手元に届く時代が現実のものとなりつつあるのです。