●クラウド・コンピューティングのさまざまな内容
クラウド・コンピューティングには、さまざまなものが含まれる。人によって、考えている対象にかなりの違いがある。ニューヨーク・タイムズの記事「What Cloud Computing Really Means 」は、概念の整理に役立つ。それによれば、クラウド・コンピューティングには、つぎのようなものが含まれる。
1. SaaS:「サービスとしてのソフトウェア」。ウェブを通じて特定のサービスを提供する。後述。
2. Utility computing:後述のアマゾンのサービスのように、データ格納などのサービスを提供する。
3. Web services in the cloud:プロバイダーが提供するAPI(後述)を用いて独自のアプリケーションを開発する。
4. Platform as a service:「サービスとしてのプラットフォーム」。プロバイダーが提供するインフラストラクチャーの上に独自のアプリケーションを乗せる。セールスフォース・ドットコムは、これまでのSaaSからPlatform as a Serviceを提供するサービスに進化したと言っている。
5. MSP (managed service providers):スパムメール除去やウィルス捜索サービスなど。
6. Service commerce platforms:SaaSとMSPを統合したもの。秘書サービスや旅行関連サービスなどがある。
7. Internet integration: SaaSなどインターネットから供給されるサービスを統合するもの。「クラウドの中のバス」とも言われる。
ニューヨーク・タイムズの記事は、これらさまざまなサービスの供給において、新しいベンチャー企業が活躍していることを紹介している。それらがすべてアメリカ企業であるのが残念なことだ。この分野に参入する日本のベンチャーが出てこないものだろうか。
これらのサービスの中には、企業向けのものも多い(むしろ、こちらのほうが主流と言えるかもしれない)。そのいくつかの概要を見ておこう。なお、これらについては、野口悠紀雄、遠藤諭『ジェネラルパーパス・テクノロジー』(2008年、アスキー新書)の第6章をも参照されたい。