モンクの何がそんなに凄いのか?

「ラウンド・ミッドナイト」は、セロニアス・モンクの最高傑作にして、ジャズのスタンダード曲の中で最も多くカヴァーされている曲です。様々なアーティストによって録音されていて、1000枚以上あるとの説もあります。

 最も知られているのは、マイルス・デイビス盤でしょう。マイルス・デイビス五重奏団の傑作アルバム「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」(写真)の冒頭に収録されています。

 このアルバムは1957年に米国最大手コロンビア社から発表されました。セールス的にも成功です。ジャケット写真も素晴らしいのですが、音楽が革新的でした。

「ラウンド・ミッドナイト」のイントロは静謐そのもの。そこから真夜中に蠢く何とも言いようのないサムシングを感じさせる主旋律を、マイルスのミュート(弱音器)付トランペットが吹きます。そして、突然の炎の如くトランペットが高音で叫ぶと、次にコルトレーンのテナーが展開する編曲の妙。更に、即興演奏はハーモニーの限界に挑む革新的なものでした。音楽はいつの世も自由を希求しているのだ、と得心させる内容です。

 勿論、これだけのことを成し遂げるには、それだけのメンバーが揃っていたのです。マイルスが率いたのは、テナーサックスにジョン・コルトレーン、ピアノにウィントン・ケリーらです。さすがマイルス・デイビス五重奏団。でも…。

「ラウンド・ミッドナイト」最大のポイントは、この楽曲そのもののチカラです。若く無名のセロニアス・モンクが作曲したこの曲は、それ以前に存在した如何なるジャズの曲にもないコード進行とハーモニーを持っています。そこには、秘められた狂気すら漂っています。素晴らしき原曲があってこそのマイルス楽団の演奏。凡人には見えない凄さを見抜いたマイルスもマイルスなら、そんな曲を書いたモンクもモンクです。

 しかも、「ラウンド・ミッドナイト」という曲は、実はマイルスが「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」を発表するよりも10年以上も前に人知れず書かれていたのです。

 狂気の淵に沈むムソルグスキーが人知れず書いた「展覧会の絵」がモーリス・ラヴェルの編曲で世に知られるようになったことと重なってみえます(本コラム第56回参照)。