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スマートフォンの理想と現実

NTTドコモはなぜインドで失敗したのか

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第64回】 2014年7月2日
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――特定地域というのは、デリー周辺のことでしょうか?

繁田 いえ、インド南部から入った印象があります。少なくとも設立当初、デリーではあまりみかけませんでした。インドの電波免許はサークル制で、タタはデリーサークルでの免許は持っていなかったはずです。全22サークルのうち、確か18個くらいしか免許取れておらず、全土展開にまでは至っていなかったかと。

 一方、料金プランについては、成功でした。特にGSMで顕著ですが、彼らのサービスが躍進したのは、1秒1パイサという料金体系の安値戦争に火をつけられたからでしょう。2009年当時でもインドの携帯料金(通話料)は比較的安かったと思いますが、その当時は1分あたりの課金が一般的でした。それを秒単位課金にすることで「安い」という印象をつけました。

――うまくいったということは、その価格政策が彼らの市場におけるポジションと、フィットしていたのでしょうか。

繁田 元々Bharti AirtelとVodafoneが図抜けていた市場の中で、彼らは4~5番手くらいでした。インドのモバイル市場が難しい要因の一つは、競合企業が多すぎることです。Bharti AirtelとVodafoneという2強に、Reliance、TATA、Idea(Birlaグループ)といった巨大財閥系の参入、またUninorやAircel(マレーシア系)等の外資グループが渾然一体となり、過当競争の市場となりました。

 そうした中で、彼らの価格政策自体は、うまくいったと思います。ただ、「タタ」というブランドのテレコムサービスの中では、ドコモ(GSM)、Indicom(CDMA)、Photon(3Gデータカード)と複数のサービスラインがあり、分かりにくかったともいえます。そして一番評価が高かったのはPhotonだったかのように思います。

 それでも、タタドコモのマーケティング・コミュニケーションは、総じてうまかった印象がありますね。文字が読めない人にも理解できるように、と、企業ロゴをデザイン化して誰でも認識できるようにしたり、facebook等を使ったキャンペーンをしかけたり。そうした広告活動や、コミュニケーションの浸透といった側面では、成功していたと思います。ただ、肝心の事業の成功には、結びつかなかったということなのでしょう。

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クロサカタツヤ
[株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学特任准教授]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。16年より慶應大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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