こうした伝え方の効果は、夫婦の会話を想像するとわかりやすいだろう。

 たとえば「今週末、外で食事しない?」と妻から提案されたとする。

「嫌だよ。週末くらい家でゆっくりしたいんだ」と拒絶してしまうと、険悪な雰囲気になりかねない。ところが、次のように答えたらどうだろう。

「そうだね。何かおいしいもので乾杯したいな。あっ、でも、この前頂いたワインがあるから、あれを開けて家でゆっくり食事をしない?」

 どちらの返答も「家でゆっくりしたい」という夫の主張なのだが、後者は「イエス・バット~」で応じているので印象がガラッと変わる。妻も、夫が自分の意見を尊重してくれていると感じ、嫌な気分にはならないだろう。

 もっとも、最初の「イエス」の言い方には工夫が必要。

 ただ機械的に「わかります」「そのとおりです」と言えばよいのではない。相手が「自分の意見を尊重してくれている」「自分の顔を立ててくれている」と感じるように、相手の主張が(一般的には)正しいことを伝えよう。そのうえで「今回は一般論が当てはまらないので○○だ」と自分の主張を展開するのだ。