私は、支社や子会社の人事責任者として、さまざまな方法を試してきたが、最も有効だと思われる方法は、本社の制度のフレームワークに、支社・子会社の事例を加えていく方法だ。例えば、本社が業績管理制度を導入したが、業績目標のカテゴリが支社の業務に合わない場合には、本社提示のカテゴリに、支社固有のカテゴリを追加する。あるいは、最も近いと思われる本社提示のカテゴリを読み替えて活用する方法である。

 例えば、「売上増大」「利益拡大」「顧客満足度向上」といったカテゴリが本社設定されている場合、顧客と接点のない組織のメンバーは、「顧客満足度向上」カテゴリは当組織では使えないと判断するのではなく、「顧客満足度向上」を「社内顧客や後工程の満足度向上」と読み替えをする。これらの方法は、業績管理システムとして大きなシェアをもつソフトウエア会社のカンファレンスで事例発表させていただいた。

 また、本社が提供する各社共通のトレーニングプログラムが子会社の実情に合致しないケースでは(というか、そうしたケースがほとんどだ)、本社が提供するプログラムに子会社の事例や話法を追加すれば良い。本社プログラムを法規制のようなものだと思い込んでいる方々には(筆者はそうは思っていないのだが)、本社のプログラムという法規制に、支社の事例や話法といった判例を加える方法だと説明するとわかりやすいようだ。

 事例や話法の収集は、10分程度の電話インタビューによってもできるので、それを実施しない手はない。この方法は、私が外資系コングロマリット企業の日本法人の人事部長時代に、同社傘下の他の日本法人に展開したり、他国法人へ輸出したりした方法である。

ちょっとした工夫によって
人事部のマインドは大きく変わる

 本社から導入を指示された本社プログラムのフレームワークに、支社の事例や話法を、支社の人事部自ら追加することができるようになると、導入の推進役である支社人事担当にとっても、自分たちのプログラムという意識がわきあがる。そうなると、導入説明会で、「私も(本社プログラムと支社の実情が)合致しないと思うのですが、本社の指示ですから従ってください」などという、他人事のような発言は出てこなくなる。