粗利率20%の会社と50%の会社では、どちらが儲かるか?
皆川は、部屋のドアをノックした。
「どうぞ」
中から聞き覚えのある癖のある声が聞こえてきた。
皆川は腫れ物に触るように、気を使いながらドアを開けて部屋に入った。
「新入社員の菅平ヒカリさんをお連れしました」
それはスタッフルームより広い部屋で、大きな両袖机とソファが置かれていた。海野はヒカリをじろりと見ると、立たせたまま機関銃のように言葉を浴びせた。
「研修期間は半年と短い。休む時間なんかないと思いなさい」
海野は椅子から立ち上がると、ヒカリにソファに座るように促した。
「うちの会社には仮眠室があるから、好きなだけ仕事ができる」
ヒカリはなんと返事をしたらいいのか戸惑っていると、海野は突然こう切り出した。
「菅平君。粗利率20%のA社と、同じく50%のB社では、どちらが儲かるだろうか?」
「それは、50%のB社だと思いますが…」
ヒカリは、なんて簡単なことを聞くのだろう、と思った。
すると海野は、薄笑いを浮かべせせら笑った。
「おバカさんだね君は。名門の東京経営大学で何を勉強してきたのかね」
ヒカリは、どう答えていいのか戸惑った。
「いいかね。原価80円の商品を100円で1000個売ったA社と、原価100円の商品を200円で100個売ったB社では、どちらが儲かっているんだね? 粗利率はA社が20%で、B社が50%だ。だが、粗利益額で見るとA社が2万円で、B社が1万円だ。A社が儲かっていることは、小学生でもわかることじゃないか。なのに、君の答えはまったく逆だ。そんなことでは、虎の穴から一生出られないぞ」
海野はそう言って、フフッ、と笑った。