この「問いかけの授業」で行われている思考訓練は、日本の初等教育ではほとんど行われていないと言っていいだろう。いや、日本での教育全体を通じても、ほとんど行われていないはずだ。

 コミュニケーションを通じて、自分と他者の考え方の違い、立場の違いを理解し、お互いにリスペクトしながら、共同作業をしていく。この作業はグローバル組織にとって欠かせないものだ。その作業の中から、新たな創造、つまりクリエイティビティが生まれてくる。

自分と他者の違いを理解する思考訓練が
足りないからブラック組織が生まれる

 日本人は、この作業のための訓練が圧倒的に足りない。それが日本の組織のグローバル化を遅らせ、ひいてはブラック組織を生み出す一因にもなっていると、筆者は考えている。

 社員それぞれに、違った視点や価値観、コミュニケーションスタイルがあってもよいが、それをすり合わせる訓練ができていないと、共同作業そのものが「面倒」になり、それぞれが孤立する「たこつぼ的組織」となってしまう。それから脱するには基本的に2つの手法がある。1つは社員1人ひとりが、真のコミュニケーション能力を身に着け、フレキシブルな組織を作り上げること。もう1つは、社員を完全に組織のやり方に従うように型にはめ、上位下達で馬車馬のように働かせる「ブラック化」だ。

 もちろん、ある程度以上の会社は、前者を目指す。それは人事にも反映されている。日本の多くの会社の人事が「コミュニケーション能力」を採用条件の上位に入れることを、IBMの社長が不思議に思っているというコメントを出したことがあるが、それは不思議ではない。これまで、多くのケースで同一の視点や価値観で仕事をしてきた日本の組織では、「個性」の幅が広がった現在、社員同士が深いコミュニケーションを取ることはずっと難しくなっている。つまり「グローバルコミュニケーション能力」に欠けているのだ。

 しかし、日本の組織の問題は、そのようなグローバルコミュニケーション能力を個人には求めながら、組織としては同一の価値観、コミュニケーションスタイルを強いるという、矛盾を抱えている点だ。異なる個性を1つの組織としてまとめていくための、思考、行動のノウハウを経営側が持っていない。