今読みたい戦略書【第7位】
野中郁二郎、竹内弘高『知識創造戦略』
新しい発想を身につけるための「組織的創造戦略」

古今東西3000年から厳選する、<br />今、日本人が読むべき「戦略書」ベスト10【後編】

 一橋大学名誉教授であり、知識経営の生みの親として知られる野中郁二郎氏とハーバード大学経営大学院教授の竹内弘高氏の共著である『知識創造企業』。本書の“知識”とは成功の方程式と考えてよいものですが、古い成功の方程式から抜け出し、新しい成功の方程式を手に入れる方法が述べられています。

『知識創造企業』は日本国内では有名な書籍であり、読んだことのある方も少なくないと思われますが、筆者は本書も読み方を間違えないことが重要だと考えています。

 特に「暗黙知(明文化されていない知識)」と「形式知(文書など共有できる形の知識)」の議論に注目が集まりがちなのですが、実際の活用では以下の3つのステップこそ重要だと判断しています。

【知識創造戦略における3つのステップ】
(1)飛躍させ方向性を与える「コンセプト創造」
(2)「体験」を先行させて議論する
(3)具体化を促進させる「象徴的な言葉」を使う

 野中氏と竹内氏が描いた「知識創造企業」は、古い成功の方程式が陳腐化し始めたとき、意図的に新しい飛躍を生み出すコンセプトを打ち出し、その方向に社員を「行動」させて体験から知恵を集め、さらに具体化促進のためスローガンとでもいうべきイメージができる言葉を有効活用しているのです。

 本書は後述する『ビジョナリー・カンパニー』に共通する、古い戦略から新しい戦略への飛躍を可能にする発想が含まれており、社会環境の変化と共にいわば脱皮を繰り返して成功をしてきた日本企業の隠れた成功戦略が描かれています。