このプロセスの最初の頃、アップルはクラウドベースのiTunesサービスを使って、アプリの形でコンテンツの販売(デバイスに合わせたコンテンツの出し分け)をしていました。じきにアップルは(レコード会社などの)伝統的な音楽ベンダーを圧倒し、世界最大の音楽ベンダーとなりました。

 アップルは、自前のコンテンツに出資してこれを販売するのではなく、他社による販売にコミッション(報酬)を出す形を取ることにより、iTunesに伴うリスクを軽減した。こうすれば、ある音楽アプリが成功すればアップルも成功する一方、その音楽アプリが失敗してもアップルの失敗にはつながらないことになります。

自社のサーバーに顧客情報を
瞬時に蓄積できる圧倒的な強み

 何よりも重要なのは、アップルはiTunesを介した購入者に関する顧客情報を、全世界的に自社のクラウドサーバに瞬時に集積していたという点です。どこの誰が何をどのような組み合わせで購入し、そのユーザーはどのアップル製品を利用し、どれくらいの頻度で購入し、支払い手段は何なのか。音楽産業の歴史において、これだけの顧客情報を手にしていた者はいません。いわんや、販売・製品プランの改善に向けて、こうした情報を利用できる立場にいた者はいません。

 今日、世界のどこを探しても、たとえグーグルのような巨大企業でさえ、これだけの量の顧客情報なり、それを利用して売上高・利益を改善するノウハウなりを手にしている企業はない。アップルはあらゆる競合他社に対して、10年に及ぶ先行優位性を築いています。

 iPhoneやiPadを使えば誰でもわかることですが、アプリの範囲は音楽に留まらずに広がっています。航空会社のパイロットでさえ、自分が操縦する機体の資料を最新のものに更新するためにiCloudのアプリを使っており、そのお蔭で私たちは安心して飛行機に乗れます。

 特に重要なのは、アップルが世界中の優良顧客を全てしっかりと確保していて、価格競争に訴える必要がないということでしょう。もし誰かが楽曲なり他の商品なりを売りたいと考え、世界で最も金払いのよい顧客にアクセスしたければ、アップルに頼らなければいけません。

 結果としてアップルは、参入している市場の全てで利益の大半を確保し、サムスンなどの競合他社は、低価格を武器にコモディティ志向の消費者を巡って争うだけの状態になっています。