ここまではよかったのですが、問題は報酬。なんと、報酬は前職とまったく変わらなかったのです。よく転職に際して行われる「前職保証」という報酬レベルのスライドで条件提示がされました。

 このOさんのような<肩書き、役割はアップして報酬はイーブン>という転職をする人が増えています。アベノミクス効果で企業の採用意欲は高まっていますが、採用時点での報酬レベルに対しては世知辛いものがあります。キャリアップと報酬アップの両方を勝ち取れる人はごくわずかです。

 では、キャリアアップしたあとのOさんはどうなったでしょうか?

 肩書きが上がれば、求められる仕事のレベルも上がります。それをこなせて当たり前、逆にこなせなければ失格となります。Oさんは初めて就いた部長職としてそれなりに頑張りましたが、1年後の人事評価は芳しいものではありませんでした。結果として年棒制の報酬は翌年には大幅にダウンしました。キャリアアップして報酬が同じであれば、それは将来の年収ダウンを意味する可能性があると痛感させられる出来事になりました。今年も頑張らないとさらに年収ダウンの可能性があります。果たして、キャリアップを目指したOさんの転職は成功だったのでしょうか?

 こうした結果を招いたのは、キャリアアップと年収アップを切り分けて考えるという決して“健全ではない発想”があったから。本来はキャリアアップと年収アップは一緒に考えられるべきものです。下手に前職保証でキャリアアップするオファーを受けたりすると、あとで後悔する可能性があることを肝に銘じておきたいものです。