スポーツ小売業国内最大手のゼビオは「感動価値」に強いこだわりを持っている。それはどのようなものだろうか。また、お客様と長期的関係を築くために心がけていることは何か。前回に引き続き、代表取締役の諸橋友良氏に詳しく聞いた。
スポーツ用品は
商品1つひとつに感動の物語が込められている
川上:ゼビオのビジネスモデルは、「組織がベクトルを合わせてスポーツを産業化し、お客様に感動を与えていく仕組み」ですよね。「顧客価値」は「感動を与える」に集約できると思いますが、なぜ諸橋さんは「感動」にこだわるのでしょうか。
諸橋:スポーツ用品は、野球グローブ1つとってもそれを買った人にはドラマが生まれやすいんです。例えば、中学校で野球部に入部した男の子が野球グローブを買ったとします。買った当初のグローブは硬いので柔らかくしないといけません。だからグローブにボールをはさんで、それが落ちないように紐で縛って枕代わりにして寝て、後日いよいよ使う……というドラマがあるわけです。商品1つひとつに感動の物語が込められているんですよね。
川上:その子が大きくなって結婚してからも、自分の子どもに野球部時代の話を聞かせたり、一緒にキャッチボールをしたりと長期に渡って物語は続きますね。
諸橋:そうなんです。お客様1人ひとりの人生のキーポイントにスポーツが関わる可能性は高い。だから「感動」にはこだわりたいし、私たちスタッフも、たった1つの道具でも、それが感動を与えることを理解した上で販売したいと思っています。