流行のシューズだからと安易に勧めることはない

諸橋友良(もろはし・ともよし)1964年(昭39年)福島県生まれ。88年成城大学経済学部卒業。94年ゼビオに入社。 97年商品部長、2000年取締役、03年に創業者の急逝に伴い社長に就任。休日はテニスで汗を流すほか、社内サークルのアイスホッケーチームでも活躍する。

川上:「感動価値」は、従業員1人ひとりがそれを自覚しているのと、そうでないのとでは、同じ商品を売るにしても売り方は大きく変わりそうですね。

諸橋:それは変わります。       「感動価値」を念頭に置いたら、もし背の小さい子が「上達したい」と意気込んでバスケのシューズを探しに来たときに、単に流行りのブランドシューズを安易にすすめすることはあり得ません。おそらくその子の体型やポジションを聞き、どんな靴がいいか話し合って、ピッタリな一足を提案します。その結果レギュラーになれたとしたら、お客様にとっても従業員にとっても、すごく嬉しいですよね。これがゼビオが考えるWin-Winの関係です。

川上:ゼビオの「感動価値」の提供は、必然的にお客様と「長期的な関係性を築く」ことにつながりますね。私は、それを「顧客の活動チェーン」という概念で示しています(図参照)。

諸橋:なるほど。「活動チェーン」とは、お客様が商品を検討して購入したとき(購入ステージ)、使っているとき(用事解決ステージ)、使い終わったあと、あるいは継続して使い続けるとき(継続ステージ)のそれぞれの場面を俯瞰で見ることができるというわけですね。

川上:そうです。ポイントは、あくまでも“お客様”の一連の活動の流れを理解できる点です。企業はお客様の活動を考慮しながら、どこに寄り添えるのか、何が提案できるのかを考えます。