中途だから、出戻りだから、技術系だから……
企業に立ちはだかる“明確な不文律”

 ある企業でこんな話を聞いた。

「彼はとても優秀な人材だけど“中途だから”……」

 役員昇格の第一候補にはならないのだそうだ。中途入社といっても、昨日今日入社してきたわけではない。もう20年以上も前に転職してきて、その企業で確たる成果を残している。それにもかかわらず、“中途だから”少なくとも第一陣としてはダメなのだそうだ。もちろん、そんなことが明文化されているわけではない。組織の暗黙の了解事項として「そういうことになっている」とキッパリという。

 別の企業からは、こんなことも聞かれた。

「外で実績を残した優秀な人材がたまたまフリーになったんだけど、“出戻り”は前例がなくてね……」

 彼が他社で残してきた実績は素晴らしい。今、喉から手が出るほど欲しい人材でもある。どうしても戻ってきてもらいたいと思いつつも、“出戻り”の彼をどのような肩書きと、どの程度の報酬で迎え入れればよいか、わからないと悩んでいるのである。

 私は「そんなに必要な人材なら、最低でも(出世の)トップの扱いで、その人の市場価値に見合った額を出せばよいのではないですか」とごく当たり前の返答をした。というよりも、それほど優秀な人材が中途半端な肩書きと報酬で戻ってくれるとは思えない。しかし、人事担当役員は「彼はうちの会社に貢献した期間が短い。他の社員の手前、それはどうだろう」と、いつまでたっても決めきれず、グジグジと悩んでいた。もちろん、優秀な彼を呼び戻すことはできなかった。

 また、別の企業ではこんな声を聞いた。

「彼は同期のなかでも格段に早く役員になったんだけどね、“技術系”の人間だから……」