ネクスト・ソサエティ
ダイヤモンド社刊
2200円(税別)

 「きわめて多くの知識労働者が知識労働と肉体労働の両方を行う。そのような人たちをテクノロジストと呼ぶ。テクノロジストこそ、先進国にとって唯一の競争力要因である」(『明日を支配するもの』)

 知識に裏付けられた技能を使いこなす者が無数に必要とされるようになった。それは技能者というよりも、「テクノロジスト」である。ドラッカーは、若者のなかでも最も有能な者、知的な資質に最も恵まれた者、最も聡明な者にこそ、テクノロジストとしての能力を持ってほしいという。

 先進国の一員であり続けたいのならば、ものづくりから離れるなど、もってのほかである。純粋の知識労働者を持つだけでは、最先端を進むことは不可能であるからだ。

 物理学、生化学、高等数学の知識について国境はない。たとえばインドは、その貧しさにもかかわらず、質量ともに、世界最高水準の医師とコンピュータプログラマーを擁する。他方で知識の裏付けはないが、低賃金でも働く肉体労働者は途上国に豊富にいる。 

 じつは、今日のところ、テクノロジストによる競争力優位を実現しているのは米国だけだという。

 「テクノロジストについて体系的で組織だった教育が行われているのはごくわずかの国でしかない。したがって今後数十年にわたり、あらゆる先進国と新興国においてこのテクノロジストのための教育機関が急速に増えていく」(『ネクスト・ソサエティ』)