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ビッグデータで人事が変わる!

退職リスク分析で
ハイパフォーマーの流出を防ぐ

北崎 茂 [PwCコンサルティング合同会社]
【第2回】 2015年3月24日
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■ステップ3:特定された課題を解決する対策を考える

 退職率を悪化させる要因が特定できたのであれば、次のステップは当然のことながら、そうした要因を解消するための施策を考えることである。A社では、もっとも影響度の高い「業績評価の低い上司」という点について改善策を講じることを考えたが、これはA社のこれまでのマネジメントのやり方を大きく覆すものとなった。

 A社では、管理職となった者は部下をもち評価を行うというのが当然であり、業績評価が悪いからといって上司を変えるわけにもいかないだろうという議論が当初は起こっていた。しかしながら、分析されたデータの結果では、業績評価が低い上司が与える組織風土や退職率のインパクトは想像以上に大きいものであったため、A社の経営陣はそうした上司については、一定期間は評価行為を実施させないという判断を下したのであった。

 実際には、標準より下の評価を取得した上司には2年間は評価行為をさせず、その上席、もしくは同列の管理職が代行して評価を行うというものである。また、優秀な管理職の負荷は高くなるものの、明確に示された退職率への影響度がこうした大胆な施策を推し進めたのである。

■ステップ4:施策の効果を予測する

 上記の施策を検討するにあたり、重要となってくるのは施策の効果予測を行うことである。A社では低評価の上司から評価権限を奪うことによる効果予測も施策検討と並行して行った。実際には、多変量解析という手法を用いて予測を行うのであるが、結果として、2年後の退職率を約3%押し下げるという試算と、それに伴う退職コストの低減額が導き出された。この試算が決め手となり、A社の経営層は提言に着手するという意思決定を行うことができたのである。

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北崎 茂
[PwCコンサルティング合同会社]

PwCコンサルティング合同会社 ディレクター。慶応義塾大学理工学部卒業。外資系IT会社を経て現職。人事コンサルティング領域に関して15年以上の経験を持つ。組織設計、中期人事戦略策定、人事制度設計から人事システム構築まで、組織/人事領域に関して広範なプロジェクト経験を有する。ピープルアナリティクスの領域においては、国内の第一人者として日系から外資系にいたるまで様々なプロジェクト導入・セミナー講演・寄稿を含め、国内でも有数の実績を誇る。現在は、人事部門構造改革(HR Transformation)、人事情報分析サービス(People Analytics)におけるPwCアジア地域の日本責任者に従事している。HRテクノロジーコンソーシアム(LeBAC)理事。

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