また、二大政党が少数意見を切り捨てているわけでもない。歴史を振り返れば、保守党・労働党は、1960-70年代の高度成長期に、ともに福祉政策の拡大を競った「福祉国家」の時代があった。今回の総選挙でも、保守党・労働党のマニフェストには、「経済」「外交」「雇用」「医療」「福祉」「教育」「移民」「女性」「環境」「エネルギー」など、あらゆる分野の政策が並び、民族、宗教など少数意見に配慮した政策も含まれている。そして、財源を考慮しながら、政策の間に優先順位を付けた包括的なパッケージとなっている。確かに、二大政党は「単一争点の中小政党」のように支持者の利益を一方的に実現しようはしない。だが、国民全体の世論の動向や、経済・財政の状況のバランスを考慮する中で、少数意見を政策の中に取り入れてきたのである。

日本においても、「小選挙区制」を正当に再評価し、
成熟した政党政治を目指すべきである

 日本政治では、中小政党が、少数者の利益を強引に実現しようとすることで、歴代政権の意思決定が混乱し、財政赤字拡大を招いてきた。今の日本政治に必要なのは、英国の二大政党のような、財源を考慮してさまざまな政策の優先順位を付けた包括的な政策パッケージを作る「政権担当能力」を持つ大政党ではないだろうか(第50回を参照のこと)。

 日本における小選挙区制の導入は「政権交代ある民主主義」「首相・党執行部の権限強化」「政策本位の政治」を徐々に実現してきたと考える(前連載第31回を参照のこと)。現在の小選挙区制における問題点は、その制度がいまだ成長過程であり、成熟できていないことを示しているだけだ。

 中小政党の横暴を許し利益誘導政治を促進する比例代表制や中選挙区制の導入は、日本政治が必要とする改革とは、真逆の方向性であるはずだ。今後も、日本政治は小選挙区制による政党政治の成熟を目指すべきだと、強く主張しておきたい。