さらに広がる仕事の選択肢
「仕事がある」のは悪いこと?

「ホームドア」事務所は、2015年4月に現在地(大阪市北区)に移転したばかりだ。「ハブチャリ」拠点も兼ねている事務所は、看板に見られるとおり、もとバイクショップ。急病など厳しい状況にある「おっちゃん」たちの一時休憩・シャワー利用のためのスペースも備えている
Photo by Y.M.

「ハブチャリで認知していただいたことから、今は民間企業さんからの委託で、おっちゃんたちの仕事が増えています。暑い時期、デパートの屋上に水を撒く仕事とか、チラシ折の内職やポスティングとか」(川口さん)

「内職」の場は、ホームドアの事務所だ。

「内職、始めてみると意外な効果がありました。生活相談に来てくれたおっちゃんに、ここで作業してもらって、すぐ工賃を渡すことができるんです」(川口さん)

 その収入は、単なる「お金」、あるいは労働の対価にとどまらず、「あなたは生きるべきだ」「あなたも路上脱出できる」というメッセージでもある。でも川口さんは、現状に満足していない。

「路上から、ホームレス状態から脱出する方法を、増やしたいと思っています。『働いて脱出することができる』だけではなく、職種の選択肢を、もっとたくさん作りたいんです。だから今、力を入れて進めていることの一つが、『仕事の種類を増やす』なんです」(川口さん)

 現在、さまざまな団体が「ホームレスに仕事を作り、路上脱出の機会を設ける」という活動を行っている。しかし、このような活動には批判も多い。代表的なものは、

「就労の機会が、『働く意志があって努力する良いホームレス』と『働く意志がなく努力もしない悪いホームレス』を分断し、『良いホームレスは救うべきだが、悪いホームレスは勝手に死ねばよい』という世論や施策につながる」

「『路上生活する権利』『公園など共有空間に住む権利』の否定につながる」

 の2パターンであろう。

 もちろん、これらの批判を招いているのは、ホームレスに対する差別意識や「公共空間」に対する認識不足だ。就労機会があり、路上脱出の可能性が生まれて悪いわけはない。しかし、批判を「的外れ」と言い切ることは難しい。生活困窮者の分断や「公共」否定につながってしまう可能性は、現実にある。とはいえ、ホームレスにとっての就労の可能性や選択肢が極めて少なく、路上脱出の手段や方法が極めて限定されている現状が、そのままで良いわけはない。