2014年10月2日、路上生活者を劣悪な住居に収容し、生活保護を受給させて生活保護費を搾取する、いわゆる「貧困ビジネス」の経営者が脱税容疑で逮捕された。「貧困ビジネス」は、何が問題なのだろうか? 政府が検討を続けている住宅扶助の引き下げは、「貧困ビジネス」の撲滅に対して有効だろうか?

脱税容疑で逮捕された
無料・低額宿泊所の経営者

 2014年10月2日、さいたま市で生活困窮者を対象とした無料・低額宿泊所を運営していた会社役員が逮捕された。逮捕された会社役員のプロフィールも含めて詳細に報道した埼玉新聞記事によれば、事件の内容は下記のとおりだ。

貧困ビジネスで脱税か 宿泊所運営の男逮捕/さいたま地検 2014年10月3日(金)
http://www.saitama-np.co.jp/news/2014/10/03/01.html

 生活困窮者のための無料・低額宿泊所を運営し、宿泊所の売上金など所得税6381万円を脱税したとして、さいたま地検特別刑事部は2日、さいたま市南区四谷、会社役員和合秀典容疑者(72)を逮捕した。

 逮捕容疑は2009、10年、入居者から徴収した約1億7500万円の所得があったのにもかかわらず、知人名義の預金口座に入金するなどして、所得を316万円と偽り、所得税6381万円を脱税した疑い。

 同地検によると、和合容疑者は宿泊所「ユニティー出発(たびだち)」を運営。同宿泊所は、さいたま市を中心に県内外に約50カ所あり、多い時期で約500人が入居していた。生活困窮者を入居させ、入居者の生活保護費の大半を生活費として搾取する「貧困ビジネス」の手口で運営していたとみられる。
(以下略)

「入居者から徴収した約1億7500万円の所得」の財源は、生活保護費である。入居者1人1ヵ月あたり約10万円の利益が得られるとすれば、「1億7500万円」とは、単身者1人が生活保護費(生活扶助・住宅扶助の上限額・その他加算)を満額受給していた場合、約1750ヵ月分程度にあたる。生活困窮者のために支払われた生活保護費が、そのまま貧困ビジネスの利益に化けて巨額の利益となることがありうる現状は、放置すべきではないだろう。

 今回は、悪質な貧困ビジネスと化している無料・低額宿泊所の存在を問題にしつづけてきた藤田孝典氏(社会福祉士・NPO法人ほっとプラス代表理事)に、何が問題なのか、どう解決されるべきなのかをインタビューした。

悪質な無料・低額宿泊所を
「必要」とする福祉事務所の事情

 この問題に藤田氏が本格的に目を向け始めたのは、2006年のことだ。藤田氏が運営にかかわる生活困窮者支援NPOに、「ぽつりぽつり」という感じで、無料・低額宿泊所から逃げ出してくる人々が相談に訪れるようになったからだ。

「その後、増えてきています。ここ数年は、年間20名弱といったところです」(藤田氏)