岸見 ぼくと子どもの関係がよくなったのを見て、すぐに同じような感性でアドラー心理学を理解してくれました。

片桐 すごい! すてきな話だなあ。うちのかみさんは、ぼく以上に悩んでると思います。よく、「あなたもちゃんと怒って」って言われますし。でも、ただでさえ長男は怒られすぎて、ちょっと家で萎縮してるんじゃないかと思うくらいなんです。だからあんまりぼくは怒りたくないんですけど……。

岸見 叱るって、即効性はあるんです。注意すれば、問題行動をいったんやめるでしょう。でも、しばらくするとまた同じことをして、また叱ることになるんです。で、叱っているほうはどんどん、「もうちょっときつく叱れば改心するんじゃないか」と諦めがつかなくなるんですよ。

片桐 うわー、まさにそうです。

岸見 でも、同じことを繰り返すってことは、叱るという行為に有効性はないのです。であれば1回違うやり方をしてみよう、という勇気を持てるかどうかが、アドラー心理学を学ぶかどうかの違いだと思います。

片桐 叱らないからといって、「放任」するのではなく、子どもが何をしているのか知った上で、見守る。本人のやりたいことに対しては、いつでも援助する用意があることを伝える。

岸見 その通りです。

片桐 わかってはいるんだけれど……(笑)。ああ、『嫌われる勇気』、かみさんにも読んでほしいなあ。