子どもの将来が心配で
つい叱ってしまう
岸見 片桐さんが先ほどおっしゃっていた、「やってみておもしろかったら続ける」というの、ぼくはすごくよくわかります。なぜなら、ぼくもアドラー心理学と出会ったとき、それを研究しようなんてすこしも思っていなかったから。
片桐 そうだったんですか!
岸見 アドラーを最初に知ったのは、研究対象としてではなく、自分の私生活がきっかけだったんです。子育ての悩みを友人の精神科医に相談したら、おもしろい本があるよとアドラーの“The Education of Children”(邦訳『子どもの教育』)という本を紹介してくれたんです。
片桐 それは驚きです。いや、ぼくも子育てには相当悩んでいて……。アドラー心理学でいうところの、「課題の分離」ができていないんですよね。ぼく自身、親にガミガミ言われて育ったので、自分はそうしないようにしようと思ってたんですけど……まあ、我慢ができないですよね(笑)。
ライター/編集者。1973年福岡生まれ。1998年出版社勤務を経てフリーに。現在、株式会社バトンズ代表。これまでに80冊以上の書籍で構成・ライティングを担当し、数多くのベストセラーを手掛ける。臨場感とリズム感あふれるインタビュー原稿にも定評があり、インタビュー集『16歳の教科書』シリーズ(講談社)は累計70万部を突破。20代の終わりに『アドラー心理学入門』(岸見一郎著)に大きな感銘を受け、10年越しで『嫌われる勇気』の企画を実現。単著に『20歳の自分に受けさせたい文章講義』(星海社)がある。
古賀 思わず言ってしまう(笑)。
片桐 黙って見守れりゃしないですよ。やれ、ごはんをちゃんと食べろ、宿題をやれ、片付けしろ、テレビをぼけっと見るな……自分が散々言われていたことばかりです。あーあ、「勉強しろ」と言う親にだけはなるまいと思っていたのに。
岸見 厳しい親御さんだったんですか?
片桐 うちは、公文式の教室をやってる家だったんですよ。だから、うちに帰ると6畳一間の一室で、子どもが10人くらいカリカリ勉強してるんです。もう、最悪ですよ!(笑)
古賀 それは……(笑)。
片桐 その部屋と襖を挟んだ隣の部屋にテレビがあるんですよね。ぼくは毎日テレビが見たかったのに、月・木・金が公文だから、平日のうち2日しか見られない。こっそり小さな音でテレビを見ては、親に怒られていました。おまけにうちは、ねえちゃんがけっこう出来がよかったのに、ぼくはぜんぜん勉強がおもしろいと思えなかった。そのことに対して、劣等コンプレックスを持っていたんです。
岸見 お姉さんと比べてしまっていたんですね。