片桐 子育ての話に戻ると、『嫌われる勇気』を読んだ直後は、「おれは、社会にコミットして生きるぞ!」「信頼に基づいて、家族とも“横の関係”を築くぞ!」と意気込んでいたんです。でも、ふと子どもを見ると「こいつ、このままで大丈夫かな」と不安になって、叱ってしまう。先生は、アドラー心理学の本を初めて読んだとき、アドラーの考えをすぐに実践されたんですか?
岸見 そうですね。
古賀 その後、つい怒りたくなることはなかったんですか?
岸見 まったくなかったです。ぼくの場合は、自分の親が反面教師になりましたね。すごく怖かったし。
片桐 『嫌われる勇気』の“哲人”が話すエピソードのように、父親に殴られたりもしたんですか?
岸見 はい。だから、「ああいう親にはならないようにしよう、でもどうすれば?」と思っていたときにアドラー心理学に出会って、「ぼくが求めていたのはこれだった!」と腑に落ちたんです。
家族のなかでひとりが変われば
家族全体が変わる
片桐 うーん、ぼくもよく親に叩かれる子どもだったんですけどねえ。何が違うんでしょう。
岸見 子どもの課題に踏み込むのってエネルギーがいるでしょ? だから、ぼくはすぐ叱るのをやめたんです。そうしたら、自分自身がすごく楽になって、同時に子どもとすごく仲良くなれた。
片桐 それって、お子さんが何歳くらいのときですか?
岸見 息子がもうすぐ3歳になるくらいのときですね。
片桐 そんな幼いころから! そのとき奥様は、アドラー心理学に対してどういう反応だったんですか?