さて、ここでお聞きします。
「2014年度の研究開発投資」はいくらでしたか?

もちろん前の図は見ないでください。
おそらく、覚えている方はいないと思います。

肝心の数字は思い出せない……。
覚えているのは、左下にあった「オジさんの顔」くらい……。
なんとしたことか……。

安心してください。ここでその数字を言える人はまずいません。

西脇 資哲(にしわき・もとあき)
日本マイクロソフト株式会社
業務執行役員/エバンジェリスト

1969年岐阜県生まれ。岐阜の小さなシステム会社でプログラマーとしてモニター画面に向き合う日々を過ごしつつ、ひそかにプレゼン技術の研究を重ねる。
96年、日本オラクルに入社し、IT業界屈指のプレゼンターとして頭角を現す。
09年、マイクロソフトに入社。マイクロソフト製品すべてを扱う唯一の日本人エバンジェリストとして活躍。
また、独自のプレゼンメソッドが口コミで広がり、全国から講演・セミナー依頼が殺到。「年間250講演、累計5万人以上・200社以上が受講」という圧倒的実績を持つNo.1プレゼン講師としても知られている。

私は実際の研修でも、同じようなスライドを使って実験します。

しかも、その際には「研究開発投資」の金額について、はっきりと数字を声に出してプレゼンしてみせるようにしています。
にもかかわらず、この質問に答えられる人は誰一人としていないのです。

どうしてこうなるのか?

9割の人が「スライド左下のオジさん」を見ているからです。
研修参加者たちは、私が数字の説明をしているあいだ、ずーっと左下の顔を見ています。
だから、説明したはずの数字も、まったく伝わっていない。

もちろん、これはただの実験です。
でも、これと同じような経験ってありませんか?

「丁寧に説明したはずなのに、『え、なんだっけ?』と聞かれる……」
「わかりやすくプレゼンしたつもりが、全然伝わっていなかった……」
「ゆっくり伝えているのに、なぜかいつも理解してもらえない……」

そんな心当たりがある人は、ちょっと思い返してみてください。
あなたが話しているとき、相手は「よそ見」をしていませんか?