国内大手メーカーに勤める丸山健太は、あるきっかけで中国製造工場の建て直しを命じられる。企業改革どころかリーダーとしての経験もない健太だが、周囲のサポートを得ながら難局と向き合い、やがて3つのミッションを通して一人前のリーダーへと成長していく――。海外における企業再生や買収・事業統合等の現場をリアルに描いたビジネス小説『プロフェッショナル・リーダー』が発売された。本連載では、同書の「ミッション1」の全文を9回に分けて掲載する(毎週火曜日と金曜日に更新)。

〈前回までのあらすじ〉小城山製作所に勤める丸山健太は、中国地方政府との合弁会社である小城山上海電機への出向を命じられる。健太は瀬戸と麻理の協力を得ながら業績改善の取り組みを加速させ、再生に手応えを感じ始めていた。その頃、サプライヤーの乱入をきっかけとして、健太は小城山上海の本質的な問題が「株主の目線が揃っていないこと」にあると気づく。

待ちに待った親会社からの支援

 健太は、瀬戸と話したことをもとに、これまでの改善策の実施状況や、黒字化の目途が立ってきたことを報告書にまとめ、本社の海外事業部に送った。

 海外事業部の田中が早速電話をかけてきた。

「丸山さん、ご無沙汰しています。お元気ですか」

「田中さん、ありがとうございます。おかげさまで、どうにかやっています。報告書、読んで頂けましたか」

「はい。この6ヵ月にわたる小城山上海の取り組みは、本社の経営陣も高く評価しています。来年度の通年黒字化が見えてきましたね!本社もようやく重い腰を上げ、小城山上海にまず5億円のつなぎ融資を実施することになりました。送金は12月末の予定です。さらに、来年の夏までに小城山上海を完全子会社化することも決定しました」

「本当ですか、ありがとうございます!これでようやく資金繰りの問題がすべて解決します」

「丸山さんが目に見える成果を出してくれたから、本社の経営陣も思い切った決断ができたのだと思います」

「いえ、私は何も。スティーブをはじめ、こちらの経営陣が全力を尽くしてくれたおかげです」

「私は丸山さんのそういうところ、好きですよ。ところで、瀬戸顧問が近いうちに上海に行くことになりましたので、その際はよろしくお願いします」

 田中は嬉しそうに言って、会話を締めくくった。