アメリカの映画賞である「アカデミー賞」について、ニューヨーク・タイムズ(NYT)の記事数から何を読み取れるかを見ることにしよう。ここで考えたいのは、つぎのような論点である。
(1)アカデミー賞の効果。ある映画のできばえや俳優の演技が優れていれば話題になるのは当然のことであるが、アカデミー賞の存在は、話題を増幅するか?
(2)アカデミー賞を獲ったから有名になるのか、それとも、有名だから(あるいは実力があるから)アカデミー賞を獲れるのか? もちろん、いずれも正しいと思われるが、どちらがより顕著と言えるか?
これを、ケイト・ブランシェット(1969年生まれ)とグウィネス・パルトロウ(1972年生まれ)のケースについて見てみよう。2人は、同世代の女優であり、第71回(1998年)のオスカー(主演女優賞)を争った(※注1)。パルトロウは「恋におちたシェイクスピア」、ブランシェットは「エリザベス」。獲得したのはパルトロウだ。
(※注1)アカデミー賞の年次の表示法は混乱しやすいので、注記しておく。「恋におちたシェイクスピア」も「エリザベス」も、1998年に公開された映画である。これらについてのアカデミー賞は、「1998年」と呼ばれる。その授賞式が行なわれたのは、1999年3月21日である。
この2人のそれぞれが登場するNYTの記事数の推移を見ると、【表1】のとおりである。以下では、記事数を「人気」の代理変数と解釈することにしよう。
◎【表1】2人がNYTに登場する記事数の推移 |