再稼働に浪費してきた額は
なんと2兆4000億円!

 時の総理大臣・田中角栄、大蔵大臣・福田赳夫、通産大臣・中曽根康弘がこの電源三法を成立させ、これが原子力発電所のための事実上の消費税導入となり、田中角栄の地元・新潟県の柏崎刈羽《かりわ》原子力発電所の建設向けに、補助金としてばらまかれた。

 法ができた時代は1974年である。つまり全世界にオイルショック(石油危機)が起こった翌年の出来事である。

 それは、アメリカのゼネラル・エレクトリックとウェスティングハウスが、日本に大量に原発を売りこむチャンスとなった時期であった。
 そのアメリカの罠にかかって、ほとんどの原発がこのあとに運転を開始したのが、日本だったのである。

 こうして「電源三法交付金」の“麻薬づけ”になった地元では、原発に経済を依存するようになって、泥沼から抜け出せなくなった。そして大量に原子力発電所が建てられてきた。こうして原子力発電所が建設された13の道県は、被害者なのである。

 前回まで述べてきたように、原子炉から至近の距離で放射能に命をさらしているのは、そこに住む地元住民である。

 一方、電力会社はみな、原子炉からかなり離れた大都会に本店を構えている。その意味では、私のような東京の人間も、罪が重いので、その都会人の立場から言っておくと、フクシマ原発事故による大量被曝を体験した日本では、地元だけでなく、ややはなれた大都会も、共に生き残る手段を考えなければならない。

 もはや「大都会に住んでいれば安全だ」などと考えるほどバカな人間はいない。つまり、“金”が動機で原発の再稼働を強行することは、本来が「電気を生み出すため」の目的とは、まったくかけ離れた、道理に合わないことである。

 もし原発がなくなると地元の経済に悪影響があるなら、「電源三法交付金」は、原発経済から脱却するための資金として、今後もしばらく交付を続けるべきである。

 13の道県の住民に危険性を押しつけて、原発のほとんどの電気を使ってきた大都会人に責任があるのだから、国税を投入して、立地13道県を救済するべきである。ただし年限を10年ぐらいに区切って、原発に代る別の地場産業を生み出すまでの地域再生基金として使わなければならない。

 安倍晋三らがおこなってきた東京オリンピックに向けた放漫支出や、再稼働に熱中して浪費してきた大金2兆4000億円に比べれば、その交付金は、見えないほど小さなものだ。それぐらいのことは、簡単にできることである。原発立地市町村の経済など、日本全土に比べれば、実に小さなものだ。地元経済には、なんの問題もない。

 むしろ、この13の道県の住民に迫っている深刻で、重大な危険性は、別のところにある。原発を運転したあとに出てくる高レベル放射性廃棄物が、日本全土で行き場を失っていることだ。
 この放射性廃棄物とは、フクシマ原発事故で日本人全員が頭からかぶったセシウムやストロンチウムと同じ危険物のことである。