強い組織をつくるには
下位概念の人に責任を押しつけないことである。
私は経営コンサルティングの会社の社長を長く務めてきた。そのなかで、コンサルティング業務に携わっている社員からの相談を受けることがよくあった。二人ほどで来て、担当業務の決めかねていることについて、どうしたらいいかと言ってくる。
二人とも優秀なコンサルタントである。だが選択肢のどちらを選ぶかに悩んでいる。自分たちがいいと思っているものはあるが決め手がない。抱えている案件を一通り説明した末に、彼らは「どうしましょうか」と言う。そういうとき私は決まってこんな言い方をしたものだ。
「どうしましょうかと言うが、君たちは二人とも頭がいい。この案件についてはもうかなりの時間も使っているだろう。その君たちが悩んで答えを出せないものに、私がこの場で聞いて正解を出せるはずがない。問題は君たち自身がどちらをいいと思っているかだ。そちらでいこうじゃないか。万一失敗したとしてもその責任は私が取る」
そういうとき私は、幹部会や取締役会、経営会議でその旨報告し、彼らが発案者であり、私が責任をもって決定すること、仮に失敗したとしてもその責任が私にあることを明言する。
仕事の内容が会社にとって重要なものになればなるほど判断も決定もむずかしくなる。リーダーにも迷いはある。コンサルタントの専門家二人が時間をかけて解決できない問題を、いくらリーダーといっても、ごく短時間の間に解決することはできない。ずっと長い時間をかけて専門的に検討してきた担当者には、情報量のうえでも分析時間の面でもかなわないのである。
組織としてどちらかを選ばなければいけない以上、最終決定、最終責任はリーダーが負わなければならない。担当者が五一%か四九%かの選択に悩んでいるのだとしたら、もっとも正しい状況判断をするための情報を持ち、さまざまな想定のなかでよりよい方法を考えられる担当者の判断はやはり優先されるべきである。
強い組織をつくるためには、直接戦う人の迷いを吹っ切ってあげる必要がある。また、強い組織をつくるには下位概念の人に責任を押しつけないことである。