社員が迷う状況に直面するとき、
リーダーはその迷いを振り払ってやる必要がある。
リーダーは個々の社員(構成員)が何を目的とし、そのために何をしなければいけないかを理解させなければならない。つまりリーダーは社員に方向を示し、組織に方向性を与えなければいけない。
事業を進めていくうえでは原理原則を確立し、貫いていくのが基本である。原理原則を守っていくとき、組織は最大限の力を発揮する。しかし、現実の世の中では往々にして、教科書で学んだことのない、複雑な状況が起こり得る。
原理原則をそのまま適用してもうまくいかない状況に直面したとき、現場は迷う。このとき、リーダーは状況を早く的確に把握し、あくまでも原理原則を貫くのか、方針転換するのかを改めて決定し、速やかに指令しなければならない。
前線で重要な任務を遂行している社員が迷う状況に直面するとき、リーダーはその迷いを振り払ってやる必要がある。
たとえば野球の試合で、三対二でリードしている九回の裏、二死満塁、ツーストライク・スリーボールのピンチを迎えたとしよう。ヒット一本出れば逆転負けである。四球を出すと同点に追いつかれ、負ける可能性が高くなる。しかしストライク一つで三振となり、試合は勝つ。
このような場面で、ピッチャーは心理的に追い込まれる。「ヒット一本打たれたら負けだ」とか、「外すと押し出しだ」と思う気持ちで冷静さを失い、萎縮してストライクが取れなくなったり、肩に力が入って球威のない球がど真ん中に入ってしまう。
そこで監督はマウンド上のピッチャーに駆け寄り、「外角低めにスライダーを投げろ。それが外れたら、おれの指示ミスだ。お前はおれの言う通り、ただ投げればいい。結果は何も気にするな」と耳元でささやく。
ここで重要なのは、いちばん打たれない可能性のあるボールを、そのピッチャーの実力通りの球威でストライクゾーンに投げさせることだ。そのためにリーダーは、現場責任者の責任を引き取り、迷いを払って、できるだけプレッシャーから解き放ってやる必要がある。