ボストンコンサルティンググループ、ドリームインキュベータで培った経験を集大成した「リーダーシップの本質」、待望の改訂3版刊行を記念しての連載です。「リーダーシップは学んで掴み取るものである」など、多くの経営者・リーダーに支持されてきた「堀紘一リーダーシップ論」をお伝えします。

どれだけ優秀な選手がそろっていても
それだけでは真に強いチームにはならない。

堀紘一(ほり・こういち [ドリームインキュベータ代表取締役会長]ドリームインキュベータ代表取締役会長。1945年兵庫県生まれ。東京大学法学部卒業。読売新聞経済部を経て、1973年から三菱商事に勤務。ハーバード・ビジネス・スクールでMBA with High Distinction(Baker Scholar)を取得後、ボストンコンサルティンググループで国内外の一流企業の経営戦略策定を支援する。1989年より同社代表取締役社長。2000年6月、ベンチャー企業の支援及び大企業の戦略策定・実行支援を行うドリームインキュベータを設立、代表取締役社長に就任。同社を2005年9月、東証1部に上場させる。2006年6月、同社会長に就任。著書には、『できることから始めよう!』(ダイヤモンド社)『「もう一度会いたい」と思われる人になれ!』『正しい失敗の法則』『コンサルティングとは何か』『30代から大きく伸びる人の勉強法』『「真のリーダー」になる条件 初めて部下をもつ人へ』(PHP研究所)ほか多数。

 リーダーの仕事は、製品を開発し、作ることではない。商品を売ることではない。会社が行っている事業の個別の仕事をすることではなく、その事業をうまく進めるための作戦を決め、社員に周知徹底させて、速やかに実践させることである。

 プロ野球の監督のように、リーダーは前線に出て直接戦うことは少ない。直接戦う選手は、監督抜きに強いチームをつくることはできない。

 強いチームになるためには、優秀な選手が必要だが、どれだけ優秀な選手がそろっていてもそれだけでは真に強いチームにはならない。最強の四番打者が一試合に四安打打っても、その前に走者が出ていなければ点は取れない。最強のエースにも失投がある。キャッチャーのリードが悪ければ、ピンチで逆転されるかもしれない。

 それはみな、当の選手より監督の責任である。監督は作戦を決め、選手を動かすが、監督のやり方次第、用兵次第で、選手は迷ったり、やる気を失ったりする。だから監督は選手の誰よりも野球をよく知り、選手を知って、自分のやり方を示し、勝つ戦いをしなければならない。

 同じように、他のすべての組織もリーダー抜きには強くなれず、またリーダー次第で強くも弱くもなるのである。したがって、もしその会社がうまくいっていないとしたら、最大の原因はリーダーにある。