東京・永田町。安全保障関連法案に反対する小規模なデモ隊を横目に、ネクタイを締めたスーツ姿の男たちが、黒塗りのハイヤーから降り、衆議院第一議員会館に吸い込まれるように入っていった。
エレベーターに乗り、向かった先は6階の議員執務室。それから40分ほどして、頭を下げながら部屋から出てきた男たちの顔に、笑みは一切見られなかった。
一見、永田町ではありふれた議員への陳情活動のようにも思えるが、やりとりされた会話の内容を探ると、それは陳情というより、さながら利益誘導のための“根回し”に近かった。
男たちとは、在京の金融機関の社員だ。関係者は「あくまで頭の体操」と表現するが、彼らが議員に示したのは、官民ファンドの産業革新機構を軸にして日本の液晶パネル産業を再編させる案だった。
再編先の一つには、液晶事業によって経営危機に陥ったシャープの名前もある。
金融機関の狙いは、機構による公的資金注入を基にして、シャープの中小型液晶部門と同業のジャパンディスプレイを経営統合させ、事業の競争力を高めると同時に、シャープの過少資本の改善につなげることだった。
一方で、訪問を受けた議員側の反応は想像以上に厳しかった。