それが2000年台中盤以降になると、トレンドメーキングの手法が変わってくる。ざっくり言えば、時代の流れを読みながら、メルセデス側が変化していったのだ。

 まずパワートレインの電動化については、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、EV、燃料電池車という環境対応車開発のロードマップを描いたが、GM・BMWとのハイブリッド車開発における提携の解消、リチウムイオン二次電池の内製化の見直し等、その姿勢は「上手くいかなければ、とっとと変える」という非常にフレキシブルなものだ。「プリウス」を基点に「MIRAI」を仮想的な終着点とした、普遍的な環境車のロードマップを構えているトヨタとは違う。

多モデル化とモデル呼称の変更を
一気に推し進めた事業戦略の凄さ

 メルセデスの最近のモデル呼称は、「GLC」「SLS」「CLS」等、3文字が増えた。

 往年のC、E、Sに慣れ親しんだ自動車評論家たちの多くが「小型車のA、Bセグメントへの参入に加えて、3文字化が進み、正直なところ頭が混乱してしまう」と漏らす。これはまさしく、製造販売者が消費者に対して商品性を強く打ち出すプロダクトアウトの発想だ。こうしたメルセデスの“身勝手”が市場で許されてしまうのは、「メルセデスはいつの時代でもベンチマーク」という消費者のメルセデスに対する思い込み(=ブランド力)があるからだ。

クロスオーバーSUVとして近年量産化される、「GLCクーペ」 Photo by Kenji Momota

 今回フランクフルトショーでは、ジャガー「F-PACE」、インフィニティ「Q30」、マツダ「越(KOERU)」等、日欧各メーカーから数多くのクロスオーバーSUVの量産車やコンセプトモデルが登場した。クロスオーバーSUVとは、従来のSUVにクーペの雰囲気を加味したモデルで、インテリア造形もポストモダニズム調のお洒落な雰囲気がある。

 こうしたトレンドは、メルセデスの新「GL」系モデルが発信源である。メルセデスは、20代、30代の顧客層向けとしてA、Bセグメントを強化し、そのなかでクロスオーバー車の開発を進め、それを上級モデルへと展開しているのだ。

先進的ドライバーアシストシステム(ADAS)では、欧州での歩行者保護に関する法整備等を睨んで、補助的自動運転や完全自動運転の実証を行う Photo by Kenji Momota

 このように世界の自動車の“車格”を変化させてしまうような事業戦略が、トヨタを含めた日系メーカーにはない。または、市場が求める“車格”が変化したと感じ、それに対して一気に事業戦略を変更するというフレキシビリティが日系メーカーにはない。

 結局、時代がドンドン変わっても「メルセデスがベンチマーク」になってしまうのだ。