もはや修行の域。
睡蓮の連作は200点以上

山田 好きとか嫌いとかいうレベルじゃなくて、もはや修行の域ですよ。最終的に行き着いた睡蓮の連作に至っては200点以上も描いてますから。

こやま
 200点以上!?

山田 めんどくさいから1点だけ紹介しましょう。上野の国立西洋美術館にある作品。これ、かなり「いい睡蓮」ですよ。

こやま 悪い睡蓮もあるんですか?

山田 なにしろ200点以上描いてるから、なかにはあまり感心できない睡蓮もあります。でも、これは間違いなくいい睡蓮。西洋美術館の基礎となるコレクションを築き上げた松方幸次郎が、モネ秘蔵の作品を本人から直接、譲ってもらったものですから。ちなみに西洋美術館のカフェの名前も「睡蓮」。そのくらい自慢の収蔵品なんですよ。

『睡蓮』1916年、国立西洋美術館、東京

 *連載第二回目は、「印象派のビッグダディ⁉モネの大家族時代」。引き続き、モネについて語っていただきます。

山田五郎(やまだ・ごろう)
評論家。1958年東京生まれ大阪育ち。映画を学ぼうと上智大学新聞学科に入るが西洋美術史に興味を持ち、オーストリアに遊学。帰国後、大学院に進もうとしたが向いてないと教授に言われ自分でもそう思ったので出版社に就職。美術書を手がけるつもりが雑誌編集者として働くことに。あらゆる分野で細分化と厳密化が進みすぎて全体像がわかりにくくなっている中で、自分は専門家ではないからこそ批判を怖れずざっくり面白く伝えることができると気づく。以来、美術、時計、食、街などについて、ざっくりした話を書いたり語ったり。近著に『知識ゼロからの西洋絵画史入門』(幻冬舎)、『銀座のすし』(文春文庫)など。テレビ『ぶらぶら美術・博物館』(BS日テレ)や『出没! アド街ック天国』(テレビ東京系)など。

こやま淳子(こやま・じゅんこ)
コピーライター。京都生まれ。早稲田大学卒業後、博報堂などを経て独立。西洋美術はズブのシロウト。そんな自分にも楽しく美術を解説してくれた山田五郎トークの魅力にとりつかれ、ギャラリストの小和田氏、VoiceVisionの上地氏らとともに『ヘンタイ美術館』を企画。「学芸員見習い」として五郎館長に教えを請うトークイベントから始まり、本書の元になった原稿を作成。様々な方々の協力を得ながら本書に至る。最近の仕事に、プラン・ジャパン「13歳 で結婚。14歳で出産。恋は、まだ知らない。」、ワコール、カゴメ、ロッテの他、宣伝会議講師なども務める。著書に『しあわせまでの深呼吸。』『choo choo 日和』シリーズ。