「それはね──」と真実は一同を見回しながら言った。「ここにいるみんなに聞くの! みんな、なぜマネージャーになろうと思ったの? それを聞けば、この成功の要因が見えてくるんじゃないかしら」
「だったら、はい!」と手を挙げたのは洋子だった。「私はね、将来起業したいと思っているの。大学とか、就職とか、なんかピンと来なくて。だから、マネジメントのことを学びたいと思っていたんだけど、高校にはそれを勉強できる場がなくて。ちょうどそのとき『もしドラ』を読んで、それで野球部のマネジメントに興味を持ったんだ」
 真実は、それをメモに取りながら、次に五月を指名した。すると、五月は立ち上がってこう言った。
「私は、洋子と友だちで、洋子に誘われたから……というのもあるんだけど、私自身は運動音痴で、スポーツはからきしダメなのね。でも、熱い青春に憧れていたから、野球部に入ったらそれが実現できるかな──と思って。だって、甲子園目指して汗と涙を流すなんて、すてきじゃない?」
「なるほど、熱い青春を体験したかった……と。じゃあ、次は公平さんお願いします」
「おれは、『もしドラ』に刺激を受けたし、文乃先生の話した『マネジメント』に興味を持ったというのもあるけど、そうだな……誰かの役に立ちたかった──というのが大きいかな。おれも運動は苦手だけど、趣味というのもなくて、毎日がただなんとなく過ぎていくだけだった。だけど、それじゃ物足りなくて、もっと生きている実感がほしかったんだ。それが、野球部を再生しようと思った動機。野球部の再生に取り組んでいると、なんかおれ、生きてるって実感できたんだよね」
 続いて、今度は真実が自ら答えた。
「私は、高校に入ったら『何か面白いことをやりたい』って思ったの。『面白い』というのは、何か勉強になることね。何かを学びたいと思ったの。だけど、勉強とか部活とか、そういうのはありきたりで、あまり興味を持てなかった。私は、何か新しい方法──誰もやっていないような方法で勉強したかった。そんなとき、『もしドラ』のことを知ったんだ。読んで、『これは面白い』と思ったの。これなら、新しいことが学べるかもしれない──そう期待したの。それで、野球部のマネージャーをやりたいって思ったんだ」
 それから真実は、最後に夢に尋ねた。
「夢は、なんでマネージャーをしてみようと思ったの?」