幸せそうに見える大家族が実は…

こやま あ、そういうふうにつながりますか。

山田 『日傘の女』の新バージョンの後に、連れ子3姉妹がボート遊びしてる絵があるんだけど、それ以降はほとんど、わらとか物ばっかり。なぜモネは急に人物を描かなくなったのか?なぜ『日傘の女』をもう一度描いたのか?なぜ顔を描かなかったのか?いろいろ考えると、この幸せそうに見える大家族は実は大きな秘密と心の傷を抱えてたんじゃないかと思えてくるんですよ。

こやま 深いですね。どこまでが五郎さんの想像で、どこからが……。

山田 ウィキペディアには「ジャン=ピエールはモネの子とも言われる」としか書いてないけど。

こやま なるほど。でもそうやって考えると、すごく面白いですね。

あの『睡蓮』は鎮魂だった!?<br />モネのドロドロの不倫劇とは。サン・マルコ広場のモネとアリス 写真、1908年

山田 人に言えない秘密を共有していたせいか、モネとアリスは仲良く最後まで添いとげるんですよね。ほら、幸せそうでしょ?

こやま 本当だ。かなり晩年ですね。
なんですかこの写真。

山田 ヴェネツィアのサン・マルコ広場でハトに餌やってたら、頭に止まっちゃったの。

こやま この写真撮った人えらいですね。アリスさんってちょっとふてぶてしい感じ、もっと可愛い人なのかと思いましたが。

山田 このアリスって人も、なかなかのタマだったんじゃないかと思いますよ。だって、ダンナが倒産して夜逃げしちゃったとはいえ、それまではセレブ一家としてパリでブイブイいわせてたんだから、頼るアテはいくらでもあったはず。なのになぜ、よりにもよって郊外の狭い家で妻とつつましく暮らしてたモネのところに転がり込んだのか。

こやま まあ、デキてたからって考えると自然ですね。