モネの『睡蓮』は鎮魂の儀式だった!?

山田 仮にデキてたとしても、浮気相手の家庭に転がり込むなんて、よほどふてぶてしくなければできませんよね。もっとも、さすがに罪悪感があったのか、病身のカミーユを献身的に看護して、自分の子どもたち以上にモネの息子たちの世話をしたそうだけど。

こやま かわいそうなカミーユさん。

山田 先に死んじゃったほうが損をするって教訓ですかね。こう考えてくると、モネのあのヘンタイ的なまでの連作は亡き妻への償いのための修行だったのかもしれないとさえ思えてくるんですよ。

こやま 睡蓮がまったく別のものに見えてきそうですね。

山田 睡蓮に至っては、もはや鎮魂の儀式だったのかも。「オレはお前のためにもう二度と人物は描かないから許してくれ」「安らかに眠ってくれ」と祈りながら描き続けた。
写経みたいなもんですね。

こやま ぞくぞくする話ですね。

山田 睡蓮は、東洋では極楽浄土の花ですから。モネはカミーユに着物コスプレさせるほど日本好きだったし、日本の文化人とも交流があったから、そのくらいのことは知っていてもおかしくない。松方幸次郎とかが「蓮の花は仏教では天国の象徴でしてなあ」なんて教えたかもしれないし。

こやま すごく腑に落ちた気がします。