不確実性と向き合おう

「何を作るのか、決まってない」「やってみないとわからない」という2つの理由で、プロジェクトの初期段階で語られるIT投資額は、ブレることがほとんどです。
 つまり大きな金額の意思決定をするには、あまりにも頼りない数字なのです。

 にもかかわらず、この時に決めた投資額を見直さずに、プロジェクトの最後まで突っ走ろうとする会社がほとんどです。

 その結果、当初予定の2倍、3倍もの費用にふくらむプロジェクトや、無理やり予算どおりに進めた結果、会社の利益につながらないプロジェクトができてしまいます。

 例えば、「業務はギリギリ回るけれど、当初目指していた戦略的な情報活用は置いてきぼり」だとか、「サービス残業の連続で、貴重なIT人材がどんどん辞めてしまう」など、会社のためにならないプロジェクトです。

 そうした失敗プロジェクトの裏には、「ITは、エンジニアに任せてある。彼らが言うには、1億でできるらしい」という経営者と、「1.5億もかかるなんて、いまさら言い出せない。形だけでも完成させなきゃ」というITエンジニアがいることでしょう。

 この二者が、同じ会社なのに別々のことを考えているのが、悲劇の原因です。
 この断絶状態を解消するためには、業務担当者や経営者が「彼らが、1億で作ると言っている」と言うのをやめるしかありません。
 悪気はなくても、これだと、ITプロジェクトの不確実性をエンジニアに丸投げすることになってしまうからです。

 先の読めない不確実な状況での判断こそ、経営者の仕事なのです。
 そして、それはITという(ひょっとしたら、あまり土地勘がないかもしれない)仕事でも同じです。というよりも、ITという不確実性に満ちた仕事だからこそ、経営者が意思決定すべきなのです。

 次回は、大失敗を避けるための決断方法について、より具体的にお話ししましょう。