こんにちは。前回は基本に立ち返り、「クラウド」の本来の価値である「ITコストの変動費化による、好不況の波に強い経営体質への改革」が、米国に比べると日本では実現しきれていない、という問題点を指摘いたしました。

 今回は、更に進化を遂げている「クラウドの今」について、お話ししたいと思います。

クラウドは小さく始められる

 その前に、少々クラウドの本来の価値(儲かっているときにはたくさん使い、そうでないときにはそれなりの費用をかける)、コンピュータ資源の変動費化について面白い事例をご紹介します。

 AGLという、オーストラリアの大手総合エネルギー企業では、いわゆるスマートメーターとクラウドを連動させ、利用者がスマートフォンなどから電力利用状況をリアルタイムで見られるようにしました。そしてその利用状況により、契約形態(夜に主に利用すると格安になる契約など)を提案する仕組みを、アバナードのオーストラリア事務所と共同で構築しました。

 日本でも、来春に行われる電力自由化により、今後同様の機能が必須になってくるものと思います。特に、顧客による電力会社の自由な選択が可能となったマーケットにおいては、非常に重要になってくる「顧客囲い込み」戦略の1つではないかと思います。

 この事例でも当然ですが、最初から多くの顧客が見込まれたわけではないので、顧客数が少ない時には、少額のクラウド利用料から始め、「利用者が増える=儲かってくる」ことに伴い、増加した分の利用料を支払うという、まさに基幹系の変動費化にうってつけのクラウド活用事例ではないかと思います。

顧客が電力使用状況をリアルタイムに確認できる、豪エネルギー企業AGLのクラウドサービス

 本題に戻ります。

 クラウドの新たな価値は、「常に必要とされるものではないコンピュータ資源を安価に待機させることができる」「超高性能機器を必要とする処理を自社で保有せずに実現出来る」ことなどが挙げられます。更に、自社では保有しづらい「人工知能」のようなコンピュータ処理が活用できる環境も整ってきています。

「常に必要とされるものではないコンピュータ」の顕著な例の1つは、災害対策だと思います。我々の親会社の1つであるマイクロソフトが提供するクラウド「Microsoft Azure(アジュール)」では、例えばSAPシステムなどを自社で保有するコンピュータで動かしている場合、それと完全に「透過(存在を意識せずに)」させておくことが可能なため、かつてのような大規模な「同期化」の仕組みを使わずとも、有事の際におけるバックアップとして、災害対策への対応を可能としています。