「花道」
「去り(引き)際」
「有終の美」
「終わりよければすべてよし」
これらはどれも、誰もが馴染みのあるフレーズではないでしょうか。日本人は、「終わり方」に美学を求めるようです。
何事も終わりがいいと、それだけで気持ちがよくなるものです。
1日の終わり、長い時間をかけた仕事の終わり、人とのお別れ。辛かったことも悲しかったことも、その終わり方ひとつで良い思い出にも苦い思い出にもなります。
「桜は、日本人の心を象徴するものだ」
このように外国人の同僚に言われたことがあります。
満開に咲き誇った桜がはらはらと舞い散る様子は、どこか寂しくて、儚くもあり美しくもあり、「風流」だと感じるのは、日本人に共通した感性です。
そんな「終わり際」を美学だと捉える日本人。
職場でも「終わりの美学」はあるのでしょうか?
部下がみな涙した
栄転する上司の“最後の言葉”
職場での「終わりの美学」として、「有終の美」を飾る場面が思い出されることでしょう。
たとえば、チームを導いたチームリーダーが「異動」する時、プロジェクトを導いたプロジェクトリーダーが「異動」する時、組織を導いた役員やトップマネジメントが「異動」する時などの場面が思い出されるかもしれません。
「ある人」が、ひとつの役割を終え、新しい役割を担い始める、そんな場面です。
皆さんも、人事異動によりポジション(役職)が変わる経験をしたことがあるでしょう。
その際に、どんなことを大切にしていましたか?
一流の人は、異動する時、つまり、あるポジション(役職)を終える時、
相手との「ラストミニッツ(最後の数分間)」を、何よりも大切にします。
ここで、あるエピソードをご紹介しましょう。
100名の部下を率いる役員(Aさん)が、栄転のため異動が決まり、部門内でお別れ会が開催された時のことです。