会社のITは、道具ではない
多くの人が誤解しているのですが、いまやITは、単なる道具ではありません。
例えば、投資家向けの財務情報を掲載するWebページやメールは、道具と言ってもいいと思います。自社の業務がどうなっているかとはあまり関係なく、買ってきて設定すれば、明日から使えるからです(これを、わたしはツール型ITと呼んでいます)。
一方で、例えば営業さんが見積から在庫確認、受注、配送手配までをコントロールするために使うITは、業務と密接に絡みついているため、その辺のお店から買ってくるわけにはいきません。
自社の業務で達成したいことを考慮しながら、時間をかけて育てる必要があります。
その代わり、ひと度しっかりしたITが構築できれば、それは大きな競争優位の源泉になります(わたしは、石油精製などの巨大工場になぞらえて、プラント型ITと呼んでいます)。
どの会社も同じようなものを使うツール型ITとは違い、プラント型ITは業務とITのすり合わせを議論したり、経営幹部が難しい投資判断を下す必要があります。
つまり、ツール型ITと違い、業務に密接に絡んだプラント型ITは、社外の人に丸投げしようがありません。
ITを丸投げすると起こること
それでも、プラント型ITをSI会社に丸投げしている会社は数多くあります。
そういう場合、何が起きているのでしょうか?
◎丸投げの弊害(1):満足のいくITは決してできない
ITエンジニア以外の社員からは、「ウチのITは本当に使いにくいよ」という愚痴というか、文句をよく聞きます。
もし、その会社がSI会社に丸投げしているのだとすると、今後も満足のいくITは手に入らないでしょう。
なぜなら、プラント型ITを作ることは、ほぼ業務を作ることと同義だからです。要望を紙に書いて「はい、よろしく」と丸投げするのではなく、もっとずっと密なコミュニケーションが必要です。
◎丸投げの弊害(2):きちんと作りすぎ、高くなる
ITをきちんと作ろうとすれば、どこまででも高くなりえます。
担当者の要望を際限なく取り込んだり、100%完璧なテストを目指したり。
・自分たちの戦略にとって、本当に必要な機能なのか?
・100%の正しさを求めないリスクは、どこまで許容できるのか?
の判断は、社外の人にはできません。ビジネスの責任を負えないからです。
もっと身も蓋もないことを言えば、SI会社としては「顧客のコストアップ≒自社の売上増」ですから、コストを下げるモチベーションすらないのです。