証券会社の業界団体、日本証券業協会(日証協)が7月20日からの導入を目指している新たな規制案が、物議を醸している。

 これは、有価証券の引き受けに関する協会規則に、「上場前に個人投資家に自己株式を販売した企業については、原則として新規上場の株式引き受けを禁止する」という項目を追加しようというもの。

 上場予定のない企業の株を、「上場すれば必ず上がる」などといって購入を持ちかける未公開株詐欺が後を絶たないことから、そうした企業の株式引き受け禁止を規則に明記することで、詐欺を未然に防ごうというのが狙いだった。

 ところが、この「原則禁止」が誤解を招き、反対の大合唱が巻き起こる。「創業時に知人や資産家といった個人から出資を受ける企業は少なくない」(関係者)からで、起業家や個人投資家たちが猛反発。さらには学者や弁護士、公認会計士までがインターネット上で次々に反対を表明するなど、「過去に類を見ないほど多数の反対意見」(日証協)が日証協に集まる事態にまで発展した。

 日証協もこうした未公開企業の事情を理解していなかったわけではない。原則禁止ではあるものの、「適正な資本政策目的なら問題ない」と、適用除外項目を同時に定めたことで、「反発など起きない」とたかをくくっていたのだ。

 現に、事前に説明を受けていた当の証券界は、「適正であれば個人の出資を受けていようが上場は可能で、これまでとなにも変わらない」(大手証券)と至って冷静に受け止めている。

 だが、適用除外項目の表現について、「具体的に盛り込むと詐欺行為者が抜け穴を見つけやすくなる」(日証協)と悩んだ結果、とかく曖昧なかたちにとどめたため、多くの関係者たちの誤解を招いてしまったというわけだ。

 よかれと思ってやったことが、逆にとんだ騒ぎを巻き起こしてしまった日証協。表現の変更を検討、施行を予定する20日までに対処する方針だ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 池田光史)

週刊ダイヤモンド