「寿命を迎える、その前日まで」
人は変われる

──では最後に、どのような方にどのように読んでほしいか、メッセージをお願いします。

古賀 やはり『嫌われる勇気』を読んで、「アドラーはもう理解した」とか「アドラーは全然使えない」など、いずれにせよアドラーについて何らかの答えを出している方にこそ、読んでほしい。おそらくこの本は、何度も自問と自答を繰り返すことを迫る一冊だと思います。ですから、考える喜びとか、答えが見えないなかを歩いていくスリルとか、そういうものを楽しんでいただきたい。何らかの答えを与えられたり、有益な情報を得たりするという即物的なものではない、考え続ける楽しさ、問い続ける興奮、そんな読書体験を味わってもらえたら本当に嬉しいです。

岸見 前作はまずは若い方が中心となって読まれたと聞いています。今回の本は若い方はもちろんですが、もっと年配の方にも読んでほしいと思っています。私はもう還暦ですが、自分の意識のなかでは青年です。かつて青年だった人、あるいはかつて青年であろうとして青年になれずに終わった人、そういう人たちに、若いときに戻り、人生を再選択する勇気を持つために読んでほしい。必ずやずいぶん違った生き方ができるはずです。

──本書の終わりのほうで哲人はこう言っています。「ある人から『人間が変わるのに、タイムリミットはあるか?』と質問を受けたアドラーは、『たしかにタイムリミットはある』と答えました。そしていたずらっぽく微笑んで、こう付け加えたのです。『寿命を迎える、その前日までだ』」と。
年齢・性別を問わずぜひ多くの方に読んでいただきたいですね。それでは本日はありがとうございました。

岸見・古賀 ありがとうございました。

(終わり)