韓国で30万部を突破し、ベストセラーランキング11週連続総合1位を続けているアドラー心理学の入門書『嫌われる勇気』。まさにアドラー・ブームの様相を呈しているソウルを、著者の岸見一郎氏と古賀史健氏がプロモーションのために訪れた。現地で『嫌われる勇気』はどのように受け入れられているのか、また日本と韓国の読まれ方には違いがあるのか。リアルな状況をお二人に語っていただいた。(聞き手:今泉憲志)
アドラー心理学そのものを知りたい
熱心な読者
哲学者。1956年京都生まれ。京都在住。高校生の頃から哲学を志し、大学進学後は先生の自宅にたびたび押しかけては議論をふっかける。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学。専門の哲学(西洋古代哲学、特にプラトン哲学)と並行して、1989年からアドラー心理学を研究。精力的にアドラー心理学や古代哲学の執筆・講演活動、そして精神科医院などで多くの“青年”のカウンセリングを行う。日本アドラー心理学会認定カウンセラー・顧問。訳書にアルフレッド・アドラーの『個人心理学講義』(アルテ)、『人はなぜ神経症になるのか』(春秋社)、著書に『嫌われる勇気』(古賀史健氏との共著、ダイヤモンド社)、『アドラー心理学入門』『アドラー心理学実践入門』(以上、ベストセラーズ)』、『アドラー 人生を生き抜く心理学』(日本放送出版協会)などがある。
──ソウルでの3日間は、各種メディアのインタビューが8本、講演会が2回、サイン会が2回と大変なハードスケジュールでした。そのなかで特に印象的だったことがあれば教えて下さい。
岸見一郎(以下、岸見) 講演をする際、日本と同じエピソードを話したときの韓国の皆さんの反応がどうなるか注意していたんです。笑うポイントなどは、基本的に日本と変わらないと感じましたが、日本人以上にストレートに反応が返ってきましたね。最終日の講演のときには、会場にいらっしゃった聴衆の方のほとんどが泣かれたというのには非常に驚きました。日本でも1〜2人が泣いている姿は見かけますが、人目をはばからず、ほとんどの人、特に女性が泣いておられる姿は極めて印象深かったです。
古賀史健(以下、古賀) 韓国に行くことになったとき、日韓では政治的に色々なことがあったりするので、もっと自分が日本人であることを自覚させられるような質問が出たり、何か敵対的な言葉を掛けられたりする場面もあるかなと想像していたんです。しかし、講演会でもサイン会でもインタビューでもそんなことはほとんどなく、本当にアドラー心理学そのものを知りたいという熱心な読者の方々に恵まれたことを実感できました。それは素直な驚きでした。
──本当にそのとおりでした。メディアが伝える日韓関連のニュースを見ていると、厳しい質問が出ると考えてもおかしくないでしょう。しかも30万部のベストセラーとなれば、単に褒められるばかりではないフェーズに入りますので。そうした質問がなかったのは、それだけアドラーの考え方が韓国の方々に刺さったということでしょうか?
岸見 やはりアドラーの教えが普遍的であることの証左だと思います。どこの国のどんな世代にでも受け入れられる内容で、あの本を読んで納得されるのは、日本も韓国もまったく変わらなかったということですね。