アドラー心理学の一大ブームを巻き起こした『嫌われる勇気』が、ついに日本と韓国で100万部を突破! そして、同書の続編にして「勇気の二部作」完結編に当たる『幸せになる勇気』が待望の刊行を果たしました。そこで、両書の著者である岸見一郎氏と古賀史健氏に2回にわたってお話を伺います。前編では『嫌われる勇気』ミリオンセラー達成まで道のりと、2人が『幸せになる勇気』に込めた思いをご紹介します。(聞き手:今泉憲志)

知名度ゼロからのスタート

──『嫌われる勇気』がついに100万部を達成しました。まずは、ここに到るまでの思いをお聞かせ願えますか。

古賀史健(こが・ふみたけ)
株式会社バトンズ代表。ライター。1973年福岡生まれ。書籍のライティング(聞き書きスタイルの執筆)を専門とし、ビジネス書やノンフィクションの分野で数多くのベストセラーを手掛ける。2014年、「ビジネス書ライターという存在に光を当て、その地位を大きく向上させた」として、ビジネス書大賞2014・審査員特別賞受賞。前作『嫌われる勇気』刊行後、アドラー心理学の理論と実践の間で思い悩み、ふたたび京都の岸見一郎氏を訪ねる。数十時間にわたる議論を重ねた後、「勇気の二部作」完結編としての『幸せになる勇気』をまとめ上げた。単著に『20歳の自分に受けさせたい文章講義』

古賀史健(以下、古賀)『嫌われる勇気』は2013年12月に出したんですが、その年のお正月に僕と編集担当の柿内さんは2人揃ってツイッターで「ミリオンセラーを目指す!」と書いているんです。それくらい内容には自信がありました。でも、具体的に出版に向けて動き始めてみると、周囲との温度差を感じる場面もありました。僕たちがアドラーを初めて知ったときの感動が、すべての人に伝わるわけではなかった。だから、長い時間をかけて支持を広げていく本になるだろうと予想していました。

──その頃は、アドラー心理学に対する認知度もまだまだ低かったですしね。

古賀 それと、いまから思うのは、『嫌われる勇気』が出版業界のヒットセオリーからは外れた本だったということです。著者が2人いて、ともにヒットメーカーというわけでもない。しかも架空の対話篇形式だったり、理解を得にくい点が多かったのかもしれない。ただ、それも出版業界のセオリーから外れていたというだけの話で、フラットに読者の目線で考えると、このスタイルは間違っていなかったと思っています。
 売れ方としても、テレビで大きく紹介されて爆発するといった感じではなく、コンスタントに読まれ続けています。読んで評価して下さった方による口コミなど、本が広がっていく一番よい形でここまで辿りつけたのは本当にありがたいことだと思っています。

岸見一郎(以下、岸見) 2010年3月に古賀さんが私のところに初めて取材に来られました。その頃アドラーはまだまったく無名でした。そこで大変失礼な質問をしたんです。「僕の本は読んでくださいましたか?」と。不勉強なまま話を聞きにこられる方もいらっしゃるので。すると1999年に私が出した『アドラー心理学入門』をきちんと読まれていて、しかも高い評価をしてくださっていた。それで意気投合してアドラー解説書の決定版を作ろうと話したのです。思えばそれからずいぶん長い時間が経ちました。いまや多くの人に支持されて、ついにミリオンまできたというのは夢のようです。