愛と幸福について
真正面から考えてほしい

──たしかに古賀さんは、この1年ほとんど寝てないんじゃないかというくらい原稿執筆に全身全霊を込めていましたよね。では、そうして完成した『幸せになる勇気』のいちばんの読みどころは何でしょう?

「愛」と「幸福」について、<br />真正面から論ずることの勇気京都にある岸見氏の自宅書斎にて。この部屋から青年と哲人の対話が生み出された。

古賀 前編でもちょっと話しましたが、『幸せになる勇気』では「愛」という大きなテーマを掲げています。その部分に是非注目してほしいです。愛について真剣に語るとか考えるって、普段は照れてしまってなかなかできませんよね。しかし、あらゆる対人関係はもちろん、仕事や学業でも、照れるという状況を乗り越えたとき初めて真剣に立ち向かうことができると思うんです。愛とはなんぞや、幸福とはなんぞや、という大きな命題に、照れることなく向き合ってほしいです。

岸見 幸福とか愛について正面切って論ずるのは恥ずかしいという人は多いと思います。私は数年前に幸福に関する本を書いたんですが、その当時、評判になっていたのは不幸について述べた本でした。どこか冷めているようなところが人々にあるせいか、幸福について論じた本はとても少ない。しかし、本書ではあえて真正面から幸福を論じました。直球ド真ん中ストライクという感じですね。ただ、幸福にせよ愛にせよ、本当は厳しいものなのです。この言葉を聞いたときに多くの人が抱くイメージとはまったく違うことが『幸せになる勇気』には書いてあります。衝撃を受ける人も多いでしょう。

──おっしゃるとおり、愛することにも幸せになることにも「勇気」が必要だと書かれていますよね。

岸見 あと、読みどころといえば、今回の本では、哲人がかなり過激ですね(笑)。

──たしかに、青年に対して「悲劇という安酒に酔っている」と言い切るなど過激ですよね。そして青年のほうも前作にも増して過激というか荒ぶっています。「ぺっ!!」という表現もあったりして。

古賀 あれは渾身のフレーズです(笑)。