リスク3.関連産業の集積
タイにおいては、すでに多くの日系企業が進出している点が投資先として魅力だ。実際、日本貿易振興機構(JETRO)海外調査部による『2013年度日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査』では、タイへの進出の魅力の理由の一つとして、「取引先(納入先)企業の集積」を回答者の39.1%が挙げている。タイに進出する製造業の企業の多くが、取引先からの依頼で進出していることからもそれは見て取れる。特に、工場移転が続く製造業界において、「生態系」としての関連企業の集積が不可欠だ。部品を製造する会社があり、また製品を買う会社があって成り立っており、単独で出て行っても輸送費ばかりかかることになる。
一方で、ミャンマーはどうか。前述の進出におけるリスクの調査では、「関連産業が集積・発展していない」点が、むしろリスク事項として23.3%の企業が挙げている。これは、将来における「リスク」ではなく、現在における「問題」という点で、切実度がより大きい。いうなれば、周りに取引先の企業が存在していないから、進出するに至っていない状況が見て取れる。
だが、この点は今後少しずつ日系企業の進出が進むにつれて、時間はかかるが改善は期待できるだろう。ティラワの工業団地のように、ある程度の規模で工場進出化可能な場所が今後提供され、また完成品メーカーの進出がより進めば、それに伴い部品納入先も参入してくる。
また、タイ国境とつなぐ「南部回廊」や「東西回廊」といった陸路の幹線道路が整備されれば、すでに日系企業の進出が進むタイの経済圏とより一体化した動きが可能になる。そうなると、現在カンボジアの国境近くにタイからの工場が移転しているように、工場進出が一気に進む可能性もある。