ノウハウは「隠す時代」ではなく、「出す時代」
佐々木 『伝え方が9割(2)』のほうは、どんな感想を持たれましたか?新たに3つの技術を紹介したうえで、大好評だったワークショップを「実況中継」という講義形式で伝えてみたのですが。
本田 『伝え方が9割』も十分再現性が高いけれど、実際公式を使おうと思った時に、「この部分はどうすればいいのかな?」などと細かい点で疑問に思うケースもあると思う。②が出たことで、より実践に落とし込みやすくなったと感じた。
佐々木 今まで250回以上講演を行っているんですが、その先々で、いい話を伺うんですよね。「本を参考にこんなふうに伝えたら、こんなにうまくいきました」というような。例えば、「取れなかった契約が、こう伝えたら取れるようになった」「言うことを聞かなかった子供が、こう伝えたら聞いてくれるようになった」「全然手伝ってくれない夫が、こう伝えたら掃除をしてくれるようになった」…などなど。こういう話を伺うたびに、僕は嬉しくて感動していたんですけれど、世の中の人もケーススタディとしてきっと知りたいだろうなと思ったのが②を書くきっかけでした。具体的な例を入れることで、例をそのまま活用できたり、それを元にさらに応用を利かせられるようになったと思います。
本田 本を出して発信すると、そういうフィードバックをもらえるのがメリットだよね。自分が持っているノウハウを本にして、それに対するフィードバックを活かせば、100だったノウハウをさらに200、300へと成長させることができる。本を出すことの、だいご味の一つだと思う。
佐々木 初めに本を出した時、実はすごく怖くて。だって、自分だけのものにしていたノウハウを全部セキララに、誰にでも実践できるように書いちゃったから、僕の仕事なくなっちゃうんじゃないかって。本田さんは、「出せば、逆に入ってくるから大丈夫」とおっしゃっていたけれど、半信半疑だったんです。でも本当に、逆に仕事が来るようになった。不思議な気持ちでしたね。
本田 料理人もそうだよね。彼らって今どんどん発信するし、作り方もバンバン教える。それに対するフィードバックをもらうことで、さらにいいものを生み出せたり、人とのつながりができて新しいインプットを得たりなど、発信することでインスパイアされることがあるとわかっているんだよね。今はノウハウを「隠す時代」じゃなくて、「出す時代」なんだと思う。
佐々木 確かに。プロが発信したことを、皆が取り入れることができれば、世の中の基本レベルが上がりますよね。伝え方もそうだし、料理だってそう。例えば、家庭内での伝え方が上手になってケンカが減ればみんな嬉しいし、家庭の料理がさらに美味しくなってもみんな嬉しいわけで。みんなの基本レベルが上がると、僕らは苦しいけれど、「プロはプロでもう一段上のレベルを目指して頑張ろう」と奮起できますから。