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マレーシアでの「母子留学」
本連載「黒い心理学」では、ビジネスパーソンを蝕む「心のダークサイド」がいかにブラックな職場をつくり上げていくか、心理学の研究をベースに解説している。
筆者がマレーシアに住んで3年近くになるが、来た当時から比べて、最も驚くことのひとつが、いわゆる「母子留学」の増加だ。
母子留学とは、子どもに「国際的なグローバル教育」を受けさせるために、母親と子どもが海外に住み、現地の学校に子どもを通わせ、父親は日本に残るというスタイルの留学である。
筆者がマレーシアに来たころ、ちょうど母子留学先としてマレーシアが注目され始めた。理由は、欧米留学に比べ、学費や滞在費が安く、治安も気を付ければまあ大丈夫、さらに日本からそう遠くなく、親日的な文化や日本人も馴染める食事など、比較的生活しやすい条件がそろっている、といったことが挙げられるが、最も重要なのは「英語教育を行うインターナショナルスクールが充実している」ことである。
マレーシアの初等教育、特にインターナショナルスクールには、インターナショナルバカロレアプログラム(IB)など、欧米のプログラムを導入している学校が多い。筆者の娘もIBプログラム学校の1つに通わせているが、少なくともその学校の教育方針には賛同できることが多いし、先生の質も総じて良い。
授業を英語で行うのはもちろん、中国語やマレー語の授業もある。生徒たちはマレー系、中華系、インド系マレー人に、さまざまな国の留学生も混じり、まさにインターナショナルだ。
そして筆者が良いと思うのは、日本にはない評価基準である。例えば、体育の評価項目は、日本の初等教育にある「適切に運動ができる」「身体能力の程度」「団体行動ができる」といったものだけではなく、「できない子を励ましてあげているか」「リーダシップを発揮してグループを率いているか」など、「他者との関わり」を含めた総合的な評価をする。つまり、個性を持つことを推奨する教育と、チームワークを重視する教育の両方を同時に行っているところである。
さらに与えられた問題を解く能力だけではなく、問題を発見する能力もつけさせるような教育をしている。詳しくは以前このコラムに書いたので、ご参照いただきたい(記事はこちら)。
筆者がこの学校に娘を通わせると決めるまでには、それなりの時間が必要だった。家族でマレーシアに引っ越した時点では、娘はまだ幼稚園の歳だったため、近隣の幼稚園に入れ、そこで半年間、マレーシアの文化や学校生活に慣れさせた。その間に、インターナショナルスクールの情報をウェブや地元で知り合った友人、また幼稚園の校長先生などに尋ね、学校の絞り込みを行なった。3、4校まで絞ったのち、それぞれの学校を実際に訪ねて、受け入れ担当者および校長先生から話を聞き、さらに娘本人を連れていって、雰囲気が好きかどうか尋ねた。