「女性は自由でない」
から脱却するために
岸見 経沢さんのご著書『すべての女は、自由である。』は、自由に生きるということが一つのキーワードになっています。しかし、裏を返せば、世の中の女性が「自由ではない」と感じていると捉えることができる。
経沢 なるほど、そうかもしれません。
岸見 もちろん、「女性が自由ではない」と感じる背景には、社会的な状況があります。しかし、なにかをしようと思っても「女性だから」とか「子どもがいるから」と女性自らが考えてしまい、自分の人生を歩まないという決意をしてしまう場合もあると思います。
経沢 私が感じるのは、多くの女性は「不利だ」と考えているともったいないということです。「育児を全部自分でやらなければいけない」、「会社ではセクハラやマタハラを受ける」。私はそう感じる人を少なくすることが目標なんですが、先生はどのように考えていますか?
岸見 そう思っているのは、「可能性」のなかに生きたい人たちなのです。自分が不利だと思う条件がまったくなくなったとき、その人たちが自由に生きられるかといえば、きっとそうではない。可能性に生きているあいだは、人のせいにできるから楽なのですよ。でも、それでは自分の人生を歩むことはできません。その意味では「女性起業家」という呼び方も止めたほうがいいかもしれませんね。
経沢 なるほど!「男性起業家」とは言いませんしね。私の場合は追い詰められて、未来を自分で見つけないと生きていけない状況が幾度もありました。なので、そこに留まっていたら、ダークサイドに堕ちてしまうし、「可哀想な私」というスタンスで生きるようになってしまう。だから「復興」みたいなもので、前向きになって1からもう一度やり直すしかありませんでした(笑)。
岸見 追い詰められないと学べないことはあります。私は以前、心筋梗塞を患いました。死の淵から生還したと言ってもいいような大きな病気でした。そこから学んだことは大きかったと思います。けれど、誰もが大きな失敗や病気を経験するわけではありません。そこで「勇気を伝染させる人」が必要になるのです。『すべての女は、自由である。』は、まさに勇気の伝染の本だと思います。「こんなに失敗しても、こう考えて乗り越えてきたんだな」と学べるところが数多くある。だから、経沢さんは大きな貢献をしていると思いますよ。「女性であることが不利」という思い込みから脱却させるためのモデルになっていらっしゃる。
経沢 ありがとうございます。後に続く女性たちが、勇気をもって進めるように貢献したいです。自分の生き方を発信すること、そしてベビーシッターの文化を普及することが、そこに繋がればいいなと思います。
自分では『幸せになる勇気』に書いてあることをかなり実践できていると思っていたんですが、今回岸見先生とお話しして、まだまだだなと痛感しました。自分の課題がいろいろクリアになった気がします。本日は、ありがとうございました。
岸見 こちらこそありがとうございました。
(終わり)