佐藤社長:当時の世間の風潮では、「家庭でつくっているものは商品化できない」という先入観があった。私たちは素人だったから、そういうことを知らない。専門家が心配して見にこられて、そう言われて初めて、「そうなの」と思ったんです。

 そこでストップして、どこかで勉強すればよかったのでしょうが、人も足りないしおカネもないので、できませんでした。いまになってみるとそれがよかった。

 小金を持っていたらそうしたでしょうが、そうしたら習ったところの範囲でしか動けません。いまでも私たちは聞く耳を持っていますが、それはお客様の声を聞く耳であって、専門家の声はご法度にしています。

 女房(澄子専務)も、ときどき東京に行ってはいいものを見つけ、これを売りたいなと思っても、そのつくり方を聞かずに、自分で買ってきてつくってみる。絶対に人マネをしないというのがさいちの原則です。マネをしたら、お手本の料理をつくった人の範囲にとどまってしまう。それは意固地になっているのではなく、私たちは素人なので、勉強していかなくてはいけないという一念を、当時と変わりなく持っているということです。

「これをつくってください、あれをつくってください……」お客様の声は、ある意味、際限がありません。それはありがたいことです。だからと言って、先生や親方の所に聞きにいかずに、自分たちで考える。そうすると、自分がつくったものに愛情がわく。自分の子どもに対する愛情と同じです。

 いまの日本では、自分たちの商品に対する愛情を忘れているように思えます。でも、それは考えなくてもいいからでしょう。へたにおカネがあるとダメですね。教えてもらえばいいという頭がありますから。

たとえ他店より原価率が高くても、
お惣菜でしっかり利益が出せる理由

さいちのお惣菜を食してみる。一流の調理人がつくった料理に、「うまい!」とひざを打つような味ではない。思わず静かに「これ、おいしねえ」とつぶやいてしまうようなおいしさとでも言えようか。そのお惣菜のレパートリーは、優に500種類を超える。そのうち300種類を季節感を大切にしながら、店頭に出している。